産後のトラブルを考える 22 <産科医療補償制度ー無過失補償制度>

周産期医療の中での補償制度といえば、2009年に始まった産科医療補償制度です。
そのHPでは、妊産婦さん向けに以下のように説明しています。

お産の現場では、赤ちゃんが健康で、元気に生まれてくるために、医師や助産師などが大変な努力をしていますが、それでも予期せぬできごとが起こってしまうことがあります。
産科医療補償制度は、お産をしたときになんらかの理由で重度脳性麻痺となった赤ちゃんとそのご家族のことを考えた補償制度です。

「基本的な考え方」には以下のように書かれています。

分娩機関に過失がなくても補償金が支払われる画期的な制度です。

「分娩機関に過失がなくても」の意味は、脳性麻痺とはに書かれているように、「出生前後の低酸素や感染症等により脳が障害を受ける」一方、原因がわからないものもあり分娩以前にすでに発症している可能性もあるからです。


この産科医療補償制度の特徴は、無過失補償であるということです。


<無過失補償とは>


産科医療補償制度「目的・創設経緯」にその説明があります。

分娩時の医療事故では、過失の有無の判断が困難な場合が多く、裁判で争われる傾向があり、このような紛争が多いことが産科医不足の理由の一つであるとされ、また産科医不足の改善や産科医療提供体制の確保が、我が国の医療における優先度の高い重要な課題とされていました。
このため、産科医療関係者などにより無過失補償制度の創設が研究、議論され、2006年11月に与党「医療紛争処理のあり方検討会」によってとりまとめられた「産科医療における無過失補償制度の枠組みについて」において、安心して産科医療を受けられる環境整備の一環として、無過失補償制度の創設が示されました。

もちろん、分娩機関の医療紛争対応への負担軽減だけでなく、患者さんや家族への視点をもって無過失補償の議論がされてきたことが、日本医師会「医療における無過失補償制度」に書かれています。

医療行為において、医師には過失がないのに不可避的に生ずることがある患者の障害に対してのいわゆる無過失補償制度についてであるが、わが国においては、未だ不十分なものがなく、そのような不運な障害を受けた患者や家族の精神的、経済的負担は極めて大きなものがある

産科医療補償制度については多々議論があるのだと思いますが、日本の医療制度の中では大きな一歩だったのではないかと思います。


それは分娩で障害を負う事になった方やご家族への産後ケアとしても大事なものだと思っています。





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