観察する 22 <立春>

1年が365日であり、4年に1度うるう年があるということが、年々とても神秘的に感じるようになっています。
当たり前だったことが、当たり前ではないという、畏怖に近い感じです。


100分の1秒差で記録される競泳を観戦するようになってから、その正確な時間の積み重ねで暦ができあがっていくことに、ますます不思議な思いが強くなっています。
そして、目の前の現象を観察して時間というものに気づき、現在の暦や時刻になるまでの長い歴史はどんなものだったのだろう、と。


冬至を過ぎると光が明るくなり、それまでは夕方4時半には暗かったのに、次第に日が長くなり始めるので気持ちも明るくなります。
こういう夏至冬至が、毎年正確にわかるようになるまで、どのように観察されていたのだろうと、ちょっと気が遠くなります。


その点、「暦の上では春ですが」がお決まりの立春の頃ですが、気温は1年のうちで最も低い日が続いたり、関東でも雪の日が増えて「春はまだ遠し」という感じです。
実際の「春が来た」という感じとはほど遠い寒さに感じるので、以前は「立春」というのは旧暦かなにかからきているのだと思っていました。


ところが、十数年ぐらい前から通勤途中の草花の変化が気になり始めた頃から、立春の時期の変化が少しずつ見えてきました。


それまで枯れ草のように茶色かった地面に、ハコベヨモギ、あるいはホトケノザなどが芽吹き始めるのがこの立春あたりです。
ハコベは一晩で数センチぐらい伸びたのではないかと思うほど、どんどんと緑を増やしていきます。


もうひとつ、立春の頃に芽吹き始める植物があることに気づきました。
紫陽花です。
あの枯れ枝のような様相の先端に、緑色のまだ硬い部分がニュッと出るのです。
線路沿いに植えられた紫陽花が、私たちの目を楽しませてくれるのは5月以降ですが、立春の頃に葉の部分が準備され始めるようです。


確かに春の始動を感じさせる時期が立春なのだと、納得しています。
関東は冬でも温暖な方ですから、他の地域では「立春」がずれるのかもしれませんが、先日、父の面会に行ったら、寒冷地のその地域でもやはりハコベが芽吹き始めていました。
立春」の感覚の地域差ってどんな感じなのだろうと、ちょっと気になりました。


さて、この年になっても知らないことやいい加減な知識が多いことばかりでヒヤリとしているのですが、立春の説明を読んで、へえーっと思った次第です。


現在広まっている定気法では太陽黄経が315度のときで2月4日ごろ。暦ではそれが起こる日だが、天文学ではその瞬間とする。

春の初め。『歴便覧』には「春の気立つを以って也」と記されている。冬至夏至の中間にあたり、昼夜の長短を基準に季節を区分する場合は、この日から立夏の前日までが春となる

立春」のひと言だけでも、長い時間をかけて観察された知識なのですね。





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