冬桜

寒さが最も厳しい季節ですが、真冬にもさまざまな花が咲いて楽しませてくれます。


今のクリニックで働き始めた10年ほど前、通勤途中に冬なのにちらほらと桜が咲いているところがありました。


最初は狂い咲きかと思ったのですが、2ヶ月も3ヶ月も咲き続けていて、しかもいつも5分咲きぐらいの割合です。
十月桜、または冬桜という品種があることを初めて知ったのでした。


小学生の頃に過ごした山間部で裏山に咲いていた野生桜に花が似ています。
「桜の一覧」を見ると、あの野生桜はマメザクラ群だったのかもしれません。
ソメイヨシノのように華やかではなく、ひっそりと咲いている、そんな感じが好きでした。



マメザクラのようなひっそりした花なのですが、関東の冬の青空を背にするとうすいピンク色の花びらが浮きあがったようにあざやかです。
寒いけれど元気を出してね、と言っているかのようです。



冬から早春にかけては、いつもと違う道を歩いて通勤することにしています。
水仙が咲き、早咲きの桃やしだれ梅、河津桜沈丁花木蓮と次々に花を楽しめる道があるのです。


花の少ない季節に咲き始めた冬桜は、こうした花が咲き始めるのを見届けたかのように、春の桜が咲く頃には終わります。
まるで自分の役目は終わったかのように。


ひっそりと咲いて、ソメイヨシノのようには誰も立ち止まっては見ていかないけれど、でも存在感のある花だと思います。