思い込みと妄想 7  <社会が求めているわかりやすい答えとして妄想話ができあがる>

いつも参考にさせていただいている「食品安全情報ブログ」ですが、2014年6月24日の「その他」に「私たちは本当にシャワーカーテンが体重を増やす原因があることを心配しなければいけないのか?」というタイトルがありました。


「シャワーカーテンが体重を増やす?」
それこそすぐに荒唐無稽な話だと思えるのですが、日々の私たちの生活にはこの手の話が渦巻いていますね。


フォーブス誌2014年6月18日の記事を紹介しています。

 数日前に雑誌Spryに「シャワーカーテンのせいで太る?」という記事が出てそれがDodge Ctiy Globeに再録された。その記事は内分泌撹乱物質の危険性について読者に注意喚起するもので、シャワーカーテンからは最大108種類の揮発性有機化合物が放出されるとする。記事のどこにも健康有害物質を与える化合物の量については記載がない。

 この記事は巷に溢れる物語の典型的症状を示す。この種の記事は大手メディアや、時にはピアレビューされた科学論文にもある。
 2009年に「肥満流行に寄与すると考えられる10の要因」という22人の筆者による79ページの論文が発表されている。カロリーの摂り過ぎと運動不足を2大要因としつつも、彼らが肥満の原因としてあげた10の要因は、犠牲物・エピジェネティックス・母親の高齢化・太った人の方が子どもが多い・太った人は太った人と結婚する・睡眠不足・内分泌撹乱物質・処方薬・日常生活の温度差・子宮内環境と世代を超えた影響、である。

これらは野心的研究課題ではありうる。しかし現時点では根拠は希薄である。筆者らに欠けているのはデーターへの批判的な視点である。たとえば内分泌撹乱物質はほとんどの人の血中や尿中に検出はされていはいるが量は少ない。このようなものは僅かな影響を与えているかもしれないが、研究は困難である。
科学がメディアから注目されすぎると、直ちに効果のある結果を期待される。その結果が一部の科学者とジャーナリストによるナンセンスな記事の大量生産になる。

たとえば日常の食品を思い浮かべても、納豆やらブルーベリーやらテレビなどで話題になると店頭からまたたくまに消えていきました。


「ナンセンスな記事(報道)」の結果、つまりなんらかの効果を期待した妄想の結果ともいえるのだと思います。


そして多くの人はあまり深く考えず、「ちょっと信憑性には欠ける記事」程度でその話題も消費されていくのに、肝心の妄想の部分だけがいつまでも繰り返し真実味をおびて蘇ってきやすいのかもしれません。


たしかに食品には何らかに効果が認められた物質が含まれていますが、それを日常に食べる量でなにかに効果があったとしたらそれは「医薬品」のレベルになってしまうわけですが、そうした常識を忘れさせてしまうほど、人々の健康への関心というニーズにこうした妄想話は相性がよいといえそうです。


結論を急ぎすぎた野心的研究課題、いいかえれば「社会が求めているようなわかりやすい答えに応じた」「社会の希望にかなうような答えが用意されている」、そういう話は科学の体をなしていても妄想話ではないかと一旦距離を置く。


それが取り込まれないための予防策のひとつかもしれません。




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