水仙

水仙の花というと1月から2月頃の寒さが最も厳しい時期に咲いて、寒い中にも春が近づいて来た希望を感じさせます。


水仙も昔ながらの清楚なニホンズイセンだけでなく、すこし華やかな西洋スイセンなど種類も増えて楽しませてくれます。
フワッと漂う香りもまた、春近しという気分にさせてくれるものです。


今年は水仙の咲き始めが早いようです。
12月初旬に父の面会に行く特急の車窓から、土手に水仙の花が咲き始めているのを見ました。
今週は、近所の庭でも咲き始めていました。


水仙というとお正月、初春の陽光といったイメージが浮かんでくる花の少ない季節の貴重な花だったのですが、最近は、水仙を見ると救急処置といった言葉が先に浮かんでくるようになりました。


以前は水仙に毒があるという知識を知らなかったのですが、ここ数年でしょうか。
水仙を食べて救急搬送をされたというニュースを1年に何度か耳にするようになったのは。


水仙の毒とは>


Wikipedia水仙には「全草が有毒だが、鱗茎に特に毒性分が多い。スイセンの致死量は10gである」とあります。鱗茎を浅葱と間違えて食べて死亡したり、「葉がニラととてもよく似ており、ニラと間違えて食べ中毒症状を起こすという事件が時々報道される」とあります。


厚生労働省「自然毒のプロファイル・高等植物・スイセン」に国内外の症例が掲載されています。



水仙の葉も有毒成分があるという割には、切り花としても使われていた記憶があるので大丈夫なのだろうかと思いましたが、上記の厚労省のサイトをみると、「daffodil itch、lily rashと呼ばれる皮膚炎は、接触による炎症であるが、アレルギー反応はまれである。ほとんどの患者はdaffodilを商業的に扱う人たちであり、茎や鱗茎から浸透してくる液をさわることで、引き起こされる」とされています。


あまり心配はいらないようですが、手袋を使った方がよさそうですね。
そして「美しい物には毒(トゲも)がある」と遠くから愛でるにとどめた方がよいのかもしれません。


水仙の毒への救急対応>



私自身の生活周辺で水仙とニラ・浅葱を間違えて食べる可能性はまずないのですが、救急対応をどうするのだろうと気になります。


10年以上前ですが、総合病院で管理師長をした時期がありました。全病棟の夜間の責任者です。
それとともに、夜間の救急外来師長も兼任でした。


二次救急ですがICUがない病院でしたから重症なものはそれほど多くないのですが、何が来るかがわからない怖さはあります。
かかりつけの患者さんで基礎疾患がわかる方はよいのですが、突然、嘔吐や意識障害で搬送されてくると原因を突き止めながら一時処置をしていく時の緊張感は半端なものではありません。


そのなかで私が一番怖く感じていたのは、異物を飲み込んだり、こうした有毒な食品を摂取した人への対応です。


「日本中毒情報センター」の「中毒事故が起こったら」を見るとわかるように「吐かせた方がよいもの、よくないもの」「牛乳や水を飲ませた方がよいもの、だめなもの」と、その初動対応でその人の命の明暗がわかれてしまうことがあります。
正直なところ、代表的なものでもとても覚えきれません。


十数年前でもまだこの日本中毒情報センターのサイトも知られていませんでしたし、救急医療・看護関係の医学書でも、こうした中毒への対処方法をわかりやすくまとめた本は手に入りませんでした。


検索していたら、「ハザード紀要(案)(スイセン)」という食品安全委員会の資料の中に、スイセンを食べた際の対応方法が書かれていました。
基本的には吐かせて、対症療法と脱水予防のようです。


みなさん本当に、「知らない野草は決して口にしないでくださいね」。


花は好きなのですが、水仙を見るとあの救急外来の緊張感が蘇ってくるのです。