10年ひとむかし 21 <梅の実の活用>

梅の花が好きになった理由のひとつに、1990年代半ばごろに住んでいた地域には、23区内でもまだ梅を栽培している土地が住宅地のなかにポツポツと残っていたことも関係していたかもしれないと思い返しています。


梅が咲き始める頃になると、ちょっと遠回りをしてその梅林、いえ林というほどの広さではないのですが、そのそばを通ることが楽しみになったのでした。
そして、「ああ、この土地からどれだけの梅酒用の梅の実がとれるのかな」とうらやましく思っていました。
ええ、私は、梅干しではなく梅酒です。


ある年、その土地は更地にされていました。
そして数年後には別の梅林も更地になり、住宅が建ちました。


まあ、そうですよね。
23区内の土地価格を考えれば、あの広さの土地から梅の実しか収穫できないのでは無駄に見えるし、あるいは相続の問題とかいろいろと事情があったのでしょう。


あの頃の、住宅地の中に白く浮き上がるような満開の梅の風景が私のどこかに記憶されていて、春になるとポツリと1本の梅でもよいので、梅の花が咲く庭を見つけては鑑賞させてもらっています。


さらに子どもの頃を思い返すと、なぜか梅の花の記憶がありません。
母が大切に育てていた庭木の中にも、梅はなかったと思います。花も実も記憶に全くないのです。
自家製の梅干しや梅酒は母が作っていましたが、梅の実は購入していました。
あ、自家製の梅酒は子どもの頃から飲んでいたことになりますね。


90年代ぐらいだと冷蔵庫には必ず梅干しがあったのですが、その後は減塩の必要性から徐々に消費量が少なくなり、最近では小さな容器に入った梅干しを購入するのも、1年に一度あるかないかぐらいまで減りました。



今でも初夏になると梅の実が店頭に並び、「梅酒、梅干しの作り方」のテキストが出るので、やはり自家製で作られている方もけっこういらっしゃるのかもしれませんね。
梅酒には挑戦してみようかなとは思うのですが、真夏に少しでも長い間不在にすると室温が30度以上に上がってしまう環境では無理かもしれないとあきらめています。



長いこと、日本の食生活の中で活用されて来た梅の実も、ここ20〜30年の間に大きな変化の時期を迎えたのかもしれませんね。
梅の花を愛で、梅の実を味わえる。
形を変えても大事にされて残っていくとうれしいのですが。




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