観察する 27 <カタクチイワシのストリームライン>

葛西臨海水族園の最初の大きな水槽の前にいる人たちの様子を見ていると、シュモクザメの姿とグルクマの大きな口に驚き、そしてだいたい数分もしないうちに次の展示へと移動することがほとんどという印象です。


時々、わーっと多勢の人が水槽の前に集まり、そしてすぐに静寂がやってくる。
そんな、シュモクザメ、エイ、アジ、イワシの大水槽です。


私もその前での滞在時間が長い割には、シュモクザメの泳ぎ方に見入っていることがほとんどでした。
ところが、何度も通ううちにそれまで見えていなかったことがだんだんと見えるようになりました。
ええ、年間パスポートを持っていますからね。

それがカタクチイワシの泳ぎ方でした。


カタクチイワシというと、東南アジアで暮らしていた時に市場でざるに山盛りで50円ぐらいで売られていました。
塩をふって、そのまま油でカリッとするぐらいまで揚げて食べるのが気に入っていました。
日本では店頭に出るのはウルメイワシが多く、なかなかこのカタクチイワシが手に入らないので残念です。


あ、今日は調理方法ではなく、そのカタクチイワシの泳ぎ方の話ですね。


Wikipediaの「生態」に書かれているように、大水槽の中では「天敵から身を守るために密集隊形を作り、群れの構成員全てが同調して同じ向きに泳いで敵の攻撃をかわす」様子が見られます。
水槽を照らすライトに、このカタクチイワシの群れが輝きながら、その隊形が七変化しながら移動しているのは本当に美しいものです。


水槽内のシュモクザメやエイに比べると何百分の一の大きさではないかと思いますし、グルクマと比べても何十分の一に見えます。
それなのに、シュッとスピードが出せるのはどうしてなのでしょうか。


ある日、ふとわかりました。
尾びれの上下の部分がキュッと畳まれたようになって、まるで一本の線になったかのようなストリームラインになることが。
ペンギンがつま先を揃えて抵抗のない泳ぎをしているのと同じですし、人間の抵抗のない泳ぎのためのストリームラインの基本のようなものなのかもしれません。


同じものを見ているようでも、観察を積み重ねるとまた違った世界が見えてくる。
まあ、自分で見つけたと喜んだ事実なんて、専門家の方々にしたら初歩的な知識にすぎないのですけれど。



ということで、またいろいろと観察しようと年間パスポートも更新したのでした。




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