院内助産とは 32 <イメージだけで広がった結果はどうか>

4年ぶりの「院内助産とは」の記事です。


最近、助産師界隈でもめっきり見聞きすることのなくなった「院内助産」ですが、先日ひとつのニュースがありました。


7年ぶりに常勤産科医 横須賀市民病院、市長「ほっとしている」
2017年8月31日(木)、神奈川新聞


横須賀市立市民病院(同市長坂)に9月、7年ぶりに産科の常勤医師が復帰する。同病院では2010年10月に常勤医師3人が退職。翌月からは助産師が出産を介助する「院内助産」を行っていた。同病院の担当者は「心強い。今後は医師と助産師の役割分担を効率的に行っていきたい」と話している。


院内助産は妊娠経過が順調で持病がなく、経産婦の場合、前回の妊娠・出産経過で異常がなかった妊婦が対象。一方で助産師は医療行為はできないため、予期せぬトラブルに対処できる常勤医師を求める声があがったという


16日に着任するのは50代の男性医師で、産科医として20年以上のキャリアを持つ。三浦市産婦人科医院に勤務する傍ら、05年からは市民病院で非常勤医師を務めているという。


同病院によると、常勤医師の復帰でリスクが高い妊婦の受け入れも可能になる。今まではある時期までに陣痛が来ない場合、横須賀市立うわまち病院(同市上町)などに転院の必要があったが、今後は陣痛促進剤の使用や帝王切開などもできる。出産件数は当面は月5件を、安定した段階で月10件を目指す。


「今後は里帰り出産などのニーズにも応えたい」と同病院。出産の予約受け付けは9月1日に開始する。上地克明市長は「西地区に光がともった。やっと戻ってきてほっとしている」と話している。

横須賀市の周産期医療の状況については私はほとんど知らないのですが、産科医がいない中で院内助産を始めるニュースは記憶にあります。
2010年11月19日に行われた横須賀市長会見の記録が、「長隆のホームページ」にありました。


また、その会見の翌日、2010年11月20日毎日新聞の「横須賀市民病院:経産婦を対象に『助産』 常勤医不在、全国で2例目」、同22日の産經新聞「医師不在で助産師だけで分娩 神奈川県初、横須賀市民病院」という記事が同じサイトに残っていました。


当時の横須賀市長の会見では、「市民からすれば医師がいて分娩することを希望していると思いますが」という記者の質問に対し、産科医補充の目処がたたないことが書かれています。
ところが、会見の最後のほうは、「医師によるお産と、助産師によるお産という、二つの異なる方法という考え方です。産科医が配置できても、助産師によるお産は行う予定」(沼田常務理事)とあります。
さらに「市は、今後助産師による出産を奨励しますか?」という問いに、「資格を持っていても助産師の仕事をしていない方がいらっしゃいます。助産師が、助産の仕事ができる環境づくりは、勧めていきたいと思っています」という答えで締めくくられていました。


助産師が、助産の仕事ができる環境づくり」
それは産科医の存在なくしてはない。
そんな自明がことが、なんだか院内助産のイメージでかき消された結果、「現代の日本では産科医がいることが分娩施設の最低限の条件」ということを見失わせた、ここ10数年だったと思います。


「院内助産」という言葉をつくり出し世の中に広げた人たちは、その結果がどうだったのか、見直して伝える責任があると思います。




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