運動のあれこれ 4 <不要な不安を広げ、そこに権威が結びつく>

うさぎ林檎さんの(妖怪)アンテナに引っかかっていた、ヒプノセラピーを取り入れているという小児科クリニックのサイトを読んでみました。


10年ほど前は、怪しげな療法妄想の世界がなぜ助産師の世界に広がるのかと驚いたのですが、どの世界もあまり変わらないのかもしれませんね。
でも、かかりつけの小児科医からヒプノセラピーを勧められる可能性があるなんて、恐ろしすぎると思います。


また、「冷えとり健康法講座」なんていうのもあって、やはりニセ科学的なものはつぎつぎと同じようなものを取り込んで広がっていく傾向があるようです。



<おむつなし育児講座>


そのサイトで気になったのが、そのクリニックでおむつなし育児の講座を開いていることでした。


「赤ちゃんは飲みながら排泄をする」に書いたように、私も東南アジアでおむつをしていない赤ちゃんの様子を見て、お母さんもまた「授乳をさせながら排泄のタイミングがわかる」ことに驚いたことがきっかけで、新生児の啼き方やしぐさを別の視点からみることができるようになりました。


でも、だからといっておむつをさせることが「不自然なこと」ではないと思い、2013年におむつなし育児についていくつか記事を書きました。

新生児のあれこれ 29 <排泄の『自然』と『不自然』>
新生児のあれこれ 30 <おむつをしない国のようす>
新生児のあれこれ 31 <赤ちゃんにおむつはいらない?>
新生児のあれこれ 32 <排泄の自律>
新生児のあれこれ 33 <排泄の自立>
新生児のあれこれ 34 <新生児〜乳児期のおむつなし育児について思うこと>


よその国の「おむつなし育児」をファンタジーのようにとらえてしまうと、「排泄物の適切な処理」という視点を見失うのではないかと思い、「下水道についてのあれこれ」を書きました。


最近は、おむつなし育児の話題を耳にすることがなかったので、自然消滅したのだろうと思っていました。



<おむつなし育児研究所と権威付け>


おむつなし育児研究所のサイトを読むと、アドバイザーを養成したり、「おむつに頼りすぎない保育」をしている施設が掲載されていました。
保育士さんを中心に、じわりと広がっているのでしょうか。


そして小児科医と教育関係で名が知られている方が、賛同しているようです。


でも書かれている「メリット」を読むと、それは本当にあることなのか、どのように検証したのかと、首をかしげることが書かれています。

一度にたくさん排泄できるので、便秘や頻尿の改善のきっかけになる
・赤ちゃんのキゲンの良い時間が長くなる
・おむつかぶれが改善する
・排泄コントロール能力が自然に育ち、1歳後半〜2歳頃には排泄が自立する事も多い
・おむつを外す時間が増えて、体の動きが活発になる
いかにも気持ち良さそうに眠る


「それをした場合としなかった場合」どうなのでしょうか。


<不安で脅かす>


おむつなし育児も、排泄物からの感染を起こさないように衛生面に気をつけてするのであれば、したい人がするのは自由だと思います。
ただし、おにぎりの安全性のように、排泄物についての正確な衛生の知識を得るのは、一般の人には簡単なようで難しいのではないかと思います。


ところが、新生児や乳児ではあまり使うことのない「頻尿の改善」という言葉を使ったり、そのサイトの「おむつはトイレではありません。成長した後のトイレトレーニングもとても楽にすすみます」では、こんな内容で不安を煽っています。

日本と同様に子どもの排泄の自立が遅くなっている欧米では、近年「トイレトレーニングの開始が遅れる(おむつの外での自然な排泄を経験することが遅れる)と、成長してから切迫尿失禁等の排泄コントロールの問題を抱えるリスクが高まる」という論文が複数の泌尿器分野の研究者によって発表され始めています。


脅かしますよね。
常識的に考えれば、「一度取得した排泄の自立が失われる」のは老化現象だと言えそうですが。



「それをしないと・・・」と脅かし、反対に「それをすれば良い子になる」ような手法は「ニセ科学とつきあうために」の「11 ニセ科学は脅かす」「12 ニセ科学は願いをかなえる」のあたりでしょう。


不要な不安を広げ、そこに権威が結びついて、他人に影響を与えたい。
そのあたりが、似たような怪しげなものが次々と連鎖していく背景かもしれませんね。
「正しいこと、善いことをみんなに伝えなければ」という、行動力のある人たちによって。


「胎内記憶から"おむつなし育児"を考える」という講演会のお知らせまでありました。
いやはや、もう何が何だかの世界ですね。




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