院内助産とは 11 <院内助産を推進する産科医>

院内助産を推進する産科医の先生方というのは、どのような考えを持ち、何が動機になっているのだろうということにずっと関心がありました。


助産師になって二十数年たくさんの産科の先生と一緒に働いてきましたが、私が出会った産科医は皆、問題がなければ赤ちゃんの頭が見える頃までは助産師に分娩を任せていました。


助産師になった頃はまだ今ほど医療訴訟や医療に対する不信感があまり表立っていないのんびりした時代でしたので、新卒の私にお産の経過を任せて休日に外出していた先生もいたくらいです。
電話をすると、外出先から戻ってお産に立ち会ったりしていました。
今の60代以上の産科医の先生というのは、お産に対するスタンスもおおらかという印象があります。あくまでも印象ですが。


その後、医療訴訟の時代になりました。また診断・治療技術がより向上することによって、分娩経過にもより正確性を求められるようになったと言ってもよいでしょう。


一般の市中病院では産科医が毎日当直できるだけの医師数はいないので、宅直といってお産があると家から産科医が駆けつけているところも多かったのではないかと思います。


家にいてもゆっくりくつろぐこともできず、夜中の電話で起こされるのは医師にとってもご家族にとっても本当にストレスなシステムだと思います。
お産で呼ぶ私たちも、できるだけ分娩直前に呼んで先生を長く待たせることがないようにしたいと思っていました。
それでも、先生方は「待つのは構わないから、早めに呼んで欲しい。お産に間に合わないのは避けて欲しい」とおっしゃっていました。
病院で分娩を請け負いすべての責任を持っているからこその一言だと思います。


<院内助産を推進するさまざまな動機>


周産期医療系の雑誌で院内助産システムの記事が増え、開設している病院の産科医の話を読める機会も増えました。


院内助産システムを始めた動機については、いくつかの共通点がありました。


ひとつ目はご自身の、分娩時の医療介入に対する反省や批判です。
それが独自のシステムや独自の分娩介助方法論のようなものを確立したいという思いになり、院内助産システムを支持する動機になっているのかもしれません。


ふたつ目は「手を出さない助産師の分娩介助」を見て感動しそれがひとつ目の産科医による管理的な分娩への批判につながり、もっと助産師に分娩を任せようという気持ちになったというところもあるようです。


三つ目は、その病院の分娩件数を増やしたいという実利的な動機や計画が、院内助産システムを選択したということもありそうです。


四つ目は、実際に産科医の確保が大変厳しい地域で、産科医の負担軽減のために院内助産システムを取り入れざるを得なかった施設もあるようです。


次からはそれぞれの動機となった点について考えてみたいと思います。





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