境界線のあれこれ 69 <保湿するかしないか>

ドラッグストアーに行くと色とりどりの容器に入ったボデイクリームが売られていて、見ているだけでも楽しくなります。


といっても、私自身はこういうボデイクリームとはほとんど無縁の生活でした。
つい最近までは顔と手と踵ぐらいしか、「皮膚に塗る」ものは使っていませんでした。
それらでさえ、気温が上がってくると不要になるほど、「潤いのあるお肌」なのです。


ボデイクリームの香りに魅かれて買ったものの、冬場でもなんだか1枚多く皮膚をまとっているかのような感覚になって、汗がどっと吹き出すのでした。
きれいな女優さんがお風呂上がりのスキンケアをしているCMは、私には一生関係のない世界かもしれないと思っていました。


ところが、更年期あたりからいろいろと皮膚にも変化が起き始めました。
二の腕の皮膚がぶつぶつとしてきて、最初は皮脂が多いのかと思ったのですが、検索してみるとどうやら毛孔性苔癬に似ているので、ボデイクリームを腕にだけ塗ってみたところ良い感じでぶつぶつが消えました。(個人的体験談)


また冬になると体中が痒くなるようになって、ようやく私にも憧れのボデイクリームで保湿する生活になったのでした。
入浴後にすぐに塗ると効果絶大であることに、保湿の大切さを実感しています。(かなり信頼度の高い個人的体験談)
まあこれは、老人性皮膚掻痒症の入り口ですね。
ただ真冬の一時期だけで、気温が上昇し始めるともうボデイクリームの出番はほとんどなくなります。



保湿の必要性といっても、かなり個人差や年代差があるのだろうと思うのですが、どうなのでしょうか。


<新生児の保湿をどう考えるか>


ここ十数年ぐらい、保湿の大切さを聞く機会が多いのですが、おそらくアトピー性皮膚炎の治療法の進歩に伴う考え方が中心になっているのではないかと思います。


また赤ちゃんのおむつかぶれも軽度のものなら、皮膚をまず石鹸とお湯できれいにしてワゼリンなどで保護をするだけでもよくなります。
皮膚の清潔と保護・保湿はスキンケアの基本と言えそうです。


ただ、新生児に保湿剤が必要かとなると、どうなのだろうと悩んでしまいます。
クリニックの健診を手伝ってくださる小児科の先生方の中でも、保湿剤への温度差があるような印象です。


新生児のお肌は部分的にとても皮脂や発汗が多い部分もあれば、足のように皮膚がむけたり、亀裂ができたり極端です。
また、皮膚が薄くてそういうトラブルのありそうな赤ちゃんもいれば、最初からしっとりしている赤ちゃんもいて、皮膚の状態にもかなり個人差があるように感じます。


以前は新生児に保湿剤を勧める先生はほとんどいなかったのですが、最近の変化はもしかして、2014年にニュースになった「新生児期の保湿がアトピー発症率を3割減に」あたりも影響があるのでしょうか。


当時、このニュースを読んだ時に、「両親もしくは兄弟に少なくとも1人以上のアトピー性皮膚炎の既往歴があり、アトピー性皮膚炎の発症リスクの高い新生児118人」が対象であること、「全身に塗布するよう指導した介入群(59人)」「乾燥した局所のみワセリンを塗布した非介入群(59人)」なので「なにもしなかった場合」の比較はされていないのだと解釈しました。


だからまだ新生児全員に保湿剤を使用することが何らかの効果があるとわかったわけではない、と読んだのですが。


新生児全体の中で、本当に保湿が必要な赤ちゃんはどれくらいの割合なのでしょうか。
お母さんたちに、「何か保湿剤を塗ったほうがいいですか?」という質問がくるたびに、答えに窮しています。



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