リンドウ

先日、仏花を手に電車に乗る人と何人かすれ違いました。
それで初めて、「ああ、今日はお彼岸なのか」と気づくぐらい、こうしたしきたりやら決まりごとに疎い私です。


ただ、いつごろからだったか、この秋のお彼岸の仏花にリンドウが使われていることが気になり出しました。


リンドウと言えば、裏山が遊び場で、遠足は裏山へのハイキングだった小学生の頃から身近な花でした。
少し空気が冷え始めた頃に、鮮やかな青紫の花が咲いている風景が大好きでした。
9月から10月頃だけ見ることができる、幻想的な色です。


その当時の仏花は菊ぐらいしかイメージが残っていないことと、あまり花屋さんでリンドウを見かけた記憶がなく、リンドウというのは野生の花のイメージでした。


1980年代頃からでしょうか、都内の花屋さんでリンドウが売られているのことが目に入るようになりました。
私が野山で観たリンドウよりももう少し青みが強く、まっすぐな茎に花がたくさんついています。
リンドウも栽培できるのかと驚いて、お店にあると買って帰り部屋に飾って秋を楽しみました。


しだいに、リンドウは秋限定ではなく夏にも冬にも見るようになり、いつごろからか仏花に加えられてセットとして売られているのが普通になりました。
私はリンドウだけを一輪挿しにさして飾るのが好きだったのですが、リンドウは昔から仏花だったのかなあとちょっといぶかしく感じています。


リンドウはいつごろから栽培されるようになったのだろうと気になり、検索してみました。
農林水産省の「平成26年度花き振興セミナー資料」の「花きの現状にいついて」という資料の25ページに、岩手県の安代リンドウが日本の生産地では1位でありオランダに輸出したり、ニュージーランドやチリで契約栽培をしていることが書かれています。


「安代りんどう」のサイトには、以下のように書かれていました。

りんどうは、リンドウ科の多年草で、山野に自生する花です。それが岩手県内で本格的に栽培されるようになったのは、1955年代後半からで、岩手の風土にあったオリジナル品種を育成し、1965年代後半から安代町を中心に積極的に栽培が開始されました。1985年には、生産量、栽培面積ともに岩手県八幡平市安代地区(旧安代町)が日本一になりました。


私が20代に入った頃から、リンドウを花屋さんで見かけるようになった印象があったのも、あながち間違いではなかったようです。
たぶん、都会で仏花に入れられたのもこの頃からではないかと想像していますが、事実は如何に。


子どもの頃は野山でしか見ることができなかったリンドウを、家に飾ることができたことが嬉しかった記憶には、こんな栽培の歴史があったのですね。
久しぶりに、リンドウを買ってみようかなと思った次第です。