事実とは何か 15 <フィンランドの出産>

前回の記事で紹介した講演内容の中で、「子ども達の行動や情緒面で問題が非常に少なく、しかも社会的能力が高い子ども達はどうして育つか」とフィンランドのことが書かれていました。


フィンランドといえば、ここ2〜3年の間に「ネウボラ」という言葉とともに出産関係ではよく耳にするようになりました。
何か魅力がある社会のシステムがあるのでしょう。


残念ながら講演内容には、フィンランドの出産がどのように「幸せ」で、それがどのように虐待などを減らしているか具体的な話はありませんでしたので、フィンランドの出産について検索してみました。


「世界の子育て研究所」というサイトに、「フィンランドの出産事情」という記事がありました。
お一人の方の視点による体験談ですが、おおよその流れがつかめます。


妊婦健診はすべて無料で、出産に関しては「フィンランドでは麻酔にるよる無痛分娩が基本で、母子ともに3日ほどで退院します」とあります。

私の場合は、まだ陣痛が弱いうちに病院に来てしまった為、胎児の心拍数と血圧を測る機材をお腹に巻き付けられたまま、待合病棟で一晩過ごしてしまい、翌日に本番を迎えました。

「胎児の心拍数を血圧を測る機材」とは、血圧ではなく「陣痛」のことで、分娩監視装置のことと思われます、「自然なお産」では否定的に捉えられて来た・・・。


まず陣痛促進剤を投与され、人口(*ママ)破水の処置がされ、陣痛が強くなってきたところで笑気ガスを吸引(*ママ)。医師の指示通りに「痛みが充分強くなってから、助産婦さんを呼ぶ」つもりで我慢していたら、もう頭がでてきてしまい、そのまま自然分娩してしまいました。

笑気は使ったものの、硬膜外麻酔をしなかったので「自然分娩」と受け止めていらっしゃるようです。



産後は、早期から母子同室になるようですが、こんなことも書かれています。

私が入院したヘルシンキのキャテイオロビストでは、外国人には英語が話せる助産婦さんが付き、日本では長男の時にも授乳で苦労したと話すと、おっぱい指導の専門家を病室に呼んでくれ、夜中に次男が泣き続ければ、助産婦さんが数時間預かってくれて、方々で温かい手が差し伸べられました


この方の妊娠・出産については、「日本とフィンランド産み比べ/靴家さちこ」という連載記事で書かれています。(冒頭でリンクしたサイトの、プロフィールから読むことができます)
お国の違いがユーモアに描かれていて、途中、何度も笑ってしまいました。


「第4回:母からの伝言ー平日に生まれよ」では、日本のA病院で長男の妊娠中の話が書かれています。

 病院から紹介された外国人向けの両親学級というのにも、夫とともに参加した。主催者は、日本で2人の子どもを産んだアメリカ人女性で、快活なジョークを交えながら、日本での出産話を盛り上げる。ビデオが上映され、見てみると、農家の大家族の嫁が、生まれてくる赤ちゃんのお兄ちゃん、お姉ちゃんも含む一族郎党が見守る中で、ひいひい叫びながら産んでいるーーそれだけ日本の出産はナチュラルなのです、と締めくくるビデオを見終わる頃には、私は固まっていた。慌てて隣りを見ると、「僕はこんなにたくさんオーデイエンスは要らないな」と早速夫が誤解している。一方近くの席のオランダ人夫婦は「日本でも家で産めるの?」と目を輝かせている。オランダでは、自宅出産が一般的なのだそうだ。

もしかして、そのビデオは「農家」ではなく、Y医院とかの「産屋」風の施設ではないかと、ちらりと思ったりしましたが、真相は如何に。


 参加者の間で話題に上ったのは、無痛分娩のことであった。どちら様も、あちこちの産院で自然分娩を勧められているらしい。その理由は、日本では、麻酔医の確保が難しいとのことであった。そして何よりも、胎児や母体への麻酔による悪影響の恐れが無い、自然分娩が王道とされており、「痛い思いをして産んだからこそ可愛いのだ」と、"痛み"は母になるための通過儀礼という文化的な要素も強い。じゃあ、鼻から痛い思いしてスイカを出せば、スイカが無性に可愛くなるのか?ーーそんなことは誰も言っていない。

「第3回:母親学級始まる」も、日本の助産師が教え込まれる保健指導が、日本以外の文化から見たら「チョットヘンデスネ」に映るだろうなと、なかなか鋭い記事でした。



ホント、幸せなんて人の数ほど感じ方が違うし、所変われば幸せなんていくつもあると客観的・相対的な視点を養わないと、「これが幸せな出産・育児です」という価値観を人に押し付ける過ちをおかしやすいのではないかと思います。


周産期医療関係者がいかに個人個人の価値観や感じ方に寛容になるか。
そのほうが、「幸せなお産」体験には大事ではないかと思いますね。
まあ、万人共有の「幸せな出産」があればの話ですが。




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