客観的のあれこれ 3 <日本のニモと世界のニモ>

水族園で魚を見ていると覚えきれないほどの魚がいて、しかも日本にしかいないとか世界のどこそこにしかいないとか、あるいは日本にも世界にも同じ姿をした種がいるけれど詳細に調べると外来種とは異なるとか、その全容を知ることは凡人には不可能な世界です。


見た目が似ていても全く異なる種だったり、異なる生活史を持っていたり、世界はひろいですね。


あ、今日の話題は魚のニモのことではなく、プールで見るニモたちのことです。


私が利用している複数の区民プールのうち、時々、おそらくインターナショナルスクールと思われる児童の授業に利用されているプールがあります。
外見は欧米やアジア系などさまざまですが、会話は英語でしています。
低学年から高学年の子どもが交じって、だいたい20数人から30人ぐらいです。


何度も更衣室やプールで一緒になるうちに、区民プールで開催されている子ども向けの水泳教室に通う日本のニモたちとの違いが見えてきました。


<同じ動作や行動をしない>


まず水着の違いで、日本のニモたちは「赤や黄色でカラフル」と書きましたが、水着じたいは黒や紺などの地味なものですが、グループ内で同じ色のキャップを全員が着用しています。
そして、そのキャップや水着のどこかに、必ず名前がわかるようになっています。


ところが、その世界のニモたち(こう呼ぶことにします)は、皆それぞれの水着やキャップ、ゴーグルで、名前がわかるようなものも身につけていません。


同じ水着でないだけでなく、授業の始まりも着替えた人から三々五々という感じです。


たとえば日本のニモを見ていると、まず更衣室からプールに行くまで、低学年だと列をつくって指導者に引率されて入ってきます。
そして整列してあいさつをし、そろって準備体操をして、まずはプールサイドに腰掛けて一斉にバタ足の練習を始めるとか、一糸乱れずの行動が要求されているかのようです。
そのあと、その日の指導計画に合わせて一人ずつ順番に泳いでいるのが日本のニモのスクールです。


ところが、世界のニモたちは、友人と群れることもなく準備ができた人からひとりでプールに入り、自由に練習を始めています。
低学年のニモもそうです。
指導者は全員が着替えるまで更衣室にいるのか、あとから登場します。
一斉に「はい、次はクロールで」ということもなく、あるニモはビート板を使ってキックを繰り返したり、それぞれがその日の課題を自分で見つけて、練習を工夫しているようです。


<興奮しない>


ニモたちの年齢なら、たとえ水泳教室であっても水の中に入るとはしゃぎたくなるのではないかと思います。
「子どもというのはそういうもの」と思っていました。


ところが、指導者が現れる前に自主的に練習をしていて、ニモ同士でふざけたりはしゃぐことがまずないのです。
おしゃべりをする様子はあるのですが、声が小さいのでほとんど聞こえません。


「さあ、集まって。これからグループ対抗のリレーをしますよ」と授業の最後の方で声がかかると、その時には応援する声などが聞こえてexcitingしている雰囲気になるのですが、それでもはしゃいだり嬌声を出すような興奮とも違うのです。


最初から最後まで指導者が大声を出すこともありませんし、「手の掻き方が違う」とか「もっとキックして」とか細かく泳ぎのフォームなどを注意することもありません。


授業の終わりも、日本のようにあいさつでしめることもなく、時間になるとまた指導者が何も言わなくても三々五々プールからあがります。


十数人ぐらいの女の子たちが着替えるので、シャワーや更衣室が混むだろうと私が時間を少しずらして行った時には、すでに皆いなくなっていることがほとんどです。
10分もしないうちに、低学年のニモも自分ひとりで着替えて外に出ています。


1時間ほどで授業が終わるのですが、キックなどで発生する水音が普段より多くなるだけで、更衣室もプールもうるさく感じることはありません。


<行動を客観的に気づくように話しかける>



更衣室では、おしゃべりをしているニモも時々いるのですが、大きな声や笑い声を出す子どもはいません。
おしゃべりに夢中になってしまうニモに対しては、「早くしなさい」ではなく、「会話に集中していますよ」とひと言だけ指導者が声をかけています。
その指導者の声もまた静かですし、「あなたの今の行動はこうです」という状況を客観的に気づかせるものであって、「ダメでしょ」「遅いわね」といった感情的な注意とは違うことがわかります。


更衣室のロッカーは、閉める時に入れた100円が戻ってくるようになっていますが、指導者が「100円を忘れないでね」と声をかけると、「気づかせてくれてありがとう」いう返事がかえってきました。
ああ、なんて大人と大人の会話なのだろうと、その返事をしたニモがどんな子なのか気になって見たら、低学年と思われるニモでした。



日本のニモの水泳教室の時間帯では指導者の大声やニモのはしゃぐ声がずっと響き渡り、更衣室では子どもだけでなく保護者や指導者の声で阿鼻叫喚の様相になるのですが、この違いは何だろうと興味深く感じています。




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