食べるということ 25 <おなかを満たすから栄養へ>

カレーはホント、食べ飽きないメニューですね。
街を歩いていてどこからともなくカレーの香りが漂ってくると、「今日はカレーにしよう!」と多大な影響を受けます。


子どものころはルーの箱に書かれていたとおりの標準的なカレーでしたが、1980年代にカレー専門店ボルツのカレーを食べるようになってからはインスタントのルーが重たく感じられるようになり、しばらく日本のカレーからは遠ざかっていました。
その代わりに、エスニック料理のカレーを好んでいました。
最近、また子どもの頃のようなカレーがむしょうに食べたくなることが増えて、インスタントのルーを常備しています。


皆さんのカレーの材料は何ですか?


私が小学生だった1960年代から70年代の記憶で、時々、家で出て来たのが厚揚げのカレーでした。
肉だと豚肉がほとんどで、しかも脂身の多いバラ肉だったので、脂身が食べられなかった私は、カレーも泣く泣く食べていました。


今はむしろ脂身もおいしく食べられるのですが、厚揚げのカレーが懐かしくなって作っています。
野菜はどんな組み合わせでも結構大丈夫ですし、さらに鮭の中骨かツナ缶を加えても美味しいです。


同年代の友人に聞いても珍しがられる厚揚げのカレーですが、どこで知ったのか母に尋ねても記憶にないようです。
でももしかしたら、あの時代の子どもに栄養を摂らせるための工夫としてひろがったのかもしれないと想像しています。


<食生活改善普及運動>


こちらの記事で紹介した「渋谷の記憶」の第三巻に、「昭和20年代後半 元広尾町での食生活改善普及運動」(p.6)という写真があり、「食生活改善普及運動を広める渋谷区の広報車と、その前に集まる街の人々です」と書かれています。


私が生まれる数年から10年ぐらい前でしょうか。


「食生活改善普及運動」の歴史は検索しても見つからなかったのですが、「日本食生活協会」の「食生活改善推進員の歴史」という年表が公開されていました。

昭和23年 保健所法により、保健所に栄養士が配置され、このころより婦人の栄養改善の意識がたかまり、料理講習会開催・共同炊事などが盛んとなる

昭和24年 栄養改善普及運動(現在の食生活改善水深普及運動月間)が始まる

昭和25年 栄養改善モデル地区の取り組みや、婦人会を中心としたリーダーによる自主的な活動、住民参加の栄養祭、料理コンクールなどが開かれるようになる
     (平均寿命男子59.57歳、女子62.91歳)


その後昭和31年から36年までの「キッチンカー全国巡回事業」や、「スキムミルク料理コンクール」などが開かれていたようです。
幼稚園で出された脱脂粉乳もこの流れだったのかもしれません。


広尾町の写真は、このあたりの時代のようです。


<タンパク質を摂れるようになる>


この渋谷の食生活改善普及運動の写真の時代は、「タンパク質が足りないよ」という時代で、「当時の国民一人あたりのタンパク質の一日量がわずか4g」でその解決のために遠洋漁業に力をいれていったという背景もあったようです。


それから10年ほど経つと、私の家のカレーには豚肉が入るようになります。
私が住んでいた山間部の地域では肉屋さんはあったのですが、魚屋さんの記憶がありません。魚というと干物や魚肉ソーセージぐらいだったのかもしれません。ちょっと曖昧な記憶ですが。


充分ではなかったかもしれませんが、タンパク質が不足しているというほどでもない食生活の記憶です。
その1960年代から70年代頃には、どれくらいの肉を食べていたのでしょうか。
検索すると、「独立行政法人 農畜産業振興機構」の「食肉の消費動向について」に書かれていました。
「魚から肉へ進む消費のシフト」(2015年9月15日)の記事に以下のように書かれています。


日本人の食生活はこの50年余りで大きく変化しています。
1960年には1人1年あたりの食肉(牛肉・豚肉・鶏肉等)供給量はわずかに3.5kgでしたが、2013年にはその10倍の30kgとなりました。一方、日本人の主食である米は115kgから57kgに、魚介類は28kg(2001年には40kgまで増加)から27kgにとそれぞれ減少しています。魚介類の消費が減っている理由として、世界的な需要の増加による価格の上昇があり、一方、食の欧米化が進んでいることから、食肉をより多く消費するようになりました。


私が生まれた1960年代初頭が、日本ではそれまでの空腹を満たすから栄養を満たす食事に変化した時期になるのかもしれませんね。


私もにわかヴェジタリアンだったことが嘘のように、肉を好んで食べるようになりました。しかも、健康を考えて。


ということで、半世紀ほどの栄養についていろいろと思い出させてくれる厚揚げのカレーです。
皆様も是非、試してみてくださいませ。




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