医療介入とは 80 <助産師と超音波画像診断機器、現在の法的解釈>

前回の記事では、2008年の「助産師業務要覧」で助産師が超音波画像診断機器を自らの判断で使用することに対しては、「異常の早期発見」のための手段でありむしろ超音波画像診断機器を使用することが「注意義務」あるいは「助産業務に当然付随する行為」という認識であることを紹介しました。


今回は、2012年に日本看護協会から出版された「新版 助産師業務要覧 第2版」では助産師が超音波画像診断機器を使用することについてどのように書かれているかみてみようと思います。


助産業務に付随する行為>


保健師助産師看護師法保助看法)第37条の「助産業務に付随する行為」の解釈を説明の中で「超音波診断機器」が触れられています。


助産師の業務」という項目では、「助産師独自の判断で実施できる業務」と「主治の医師の指示に基づいて行う業務」について説明が書かれていますが、超音波画像診断については、「助産師独自の判断で実施できる業務」として書かれています。

助産師は医師の指示があった場合を除くほかは、診療機器の使用や医薬品の指示等の医療行為を行うことが禁止されているが、「助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然付随する行為をする場合は、この限りでない」とされている。助産業務に当然付随する行為としては、次のものが挙げられる。

助産業務に付随した行為、つまり医師の指示がなくても助産師独自の判断で実施できる業務として以下の項目が挙げられています。

1.胎児心音の聴取
 近年、診療機器の発達改善により、胎児心音の聴取もより明確で確実に診断できるようになってきている。心音聴診器を用いた児心音聴取は当然のことであるが、ドップラー聴診器、胎児心拍陣痛計なども、現在では当然助産師が使用できなければならない機器である。

1948(昭和23)年制定当時には、「胎児心音の聴取」に関しては保助看法第37条には明記されていませんでした。


それは「胎児が元気か」を知ることができても、胎児が元気なうちに出生できるような医療の恩恵がまだまだ遠い夢の世界だった時代だったからかもしれません。


「胎児が元気なうちに安全に分娩を終了させたい」という想いがかない始めたのが1970年ごろであり、それに伴い助産師の「胎児心音の聴取方法」が変化していったことは「CTGと助産婦、1970〜90年代の変遷」に書きました。


そしてようやく、分娩監視装置は「当然助産師が使用できなければならない機器」であり、「助産業務に付随する行為」であるという法的解釈が明確になりました。


では、超音波画像診断機器についてはどのようにとらえられているのでしょうか?

2.胎児位置、大きさなどの診断

 レオポルド触診法による妊産婦診査は助産師の診査技術として重要であるが、近年超音波診断機器の普及により、より確実に診断できるようになった。これら超音波診断機器の活用も、助産に付随する行為としてその技術の習得を図ることが重要である

レオポルド触診法というのは、妊婦さんのお腹を触診して児頭や児背を確認しながら胎位(頭位や骨盤位、横位)などを確認する方法で、助産師・看護師には必須の技術ですし、助産業務に当然付随する行為であることは誰も異論はないことでしょう。


2008年の段階では「異常の早期発見の手段」「注意義務」というとらえかたの中で助産師が超音波画像診断機器を独自の判断で使用することに法的な解釈をしていました。


そして現在では、「助産業務に当然付随する行為」として保助看法第37条を解釈し、「助産師の業務」の中で超音波画像診断機器の使用を明確に認めた書き方をしています。


ということは、助産所のHPでみかける超音波画像診断機器も、医師の指示あるいは許可がなくても助産師の判断で購入できるという解釈が可能なのでしょうか?
診断のための医療機器なのですが。


そして超音波画像診断機器による胎児の位置と大きさの確認は、本当に「助産に当然付随する行為」なのでしょうか?
その点を次回考えてみようと思います。