医療介入とは 75 <いつ頃から助産師が超音波画像診断機器を扱うようになったのか>

私自身は、今までの勤務先で超音波画像診断機器を操作した経験はありません。


羊水検査などで、医師が処置をする際に助手としてエコーのプローブ(超音波をあてる部分)を固定する介助をした程度です。


数年前に「助産院は安全?」に出会ってから助産所のHPに関心がでてきたのですが、当時は、助産所で超音波画像診断機器を持っていることを表明しているところはわずかしかなかったと記憶しています。


助産所で超音波診断機器を使うのは医師法あるいは保助看法に違反しないのだろうか」という、素朴な疑問を当時から持っていました。


その頃から、マスメディアで助産所や院内助産システムが報道される際には、「助産師が妊婦さんに超音波画像診断機器を使用している場面」が使われることが多くなり、実際に助産所や院内助産システムのHPで超音波画像診断機器の写真を掲載しているところが急増しました。


同じ超音波診断機器でも、助産師側が「自然なお産」のために分娩監視装置を使わないと抵抗してきた流れとは大違いであることに驚きととまどいを感じたというのが正直な感想です。


<いつ頃から超音波画像診断機器の研修が行われたか>


日本の周産期医療でいつ頃から超音波機器が臨床で使われるようになったかについてはこちらの記事で書きました。


1980年代終わりの頃に助産師になった当時でも、まだ不鮮明な画像でしかも経腹エコーがようやく広がりだした時代です。
もし私が看護学校を卒業後すぐに助産婦学校へ進学していたら1980年代前半に助産婦になっていたのですが、その場合だと授業では超音波画像診断についてはほとんど学ぶ機会もなかった可能性があります。


それほど、1980年代から90年代初頭は助産師にとって取り扱う医療機器に大きな変化のあった時代でした。


助産師・看護師のための超音波画像診断」(高橋克幸・武谷雄二氏監修、南江堂、2007年)は、1993年に初版が出版されました。


診療の補助をする看護職にとって、診断機器についての基礎知識は必要です。
そのために出版されたものと思っていたのですが、その改訂版2版(2007年)には「改訂版刊行にあたって」の中で以下のように書かれています。

 本書の初版が出版されるまでは、本邦では助産師・看護師用の超音波画像診断の成書は存在しませんでした。助産師や看護師が、超音波画像診断にかかわるのは、医師法に違反するのではないか、という意見が少なからずあったからです。
どこまで踏み込むか、によっては、そのような問題も出てくるでしょう。しかし助産師が超音波診断装置を用いて妊婦が正常に経過しているか否かを診ることは、周産期医療に関与する専門職の助産師にとっては必要なことですし、産婦人科に勤務する看護師にとっても画像診断の知識をもつことは、きわめて大切なことです。

この文から、看護師には超音波画像診断機器の基礎知識のためであるのに対して、助産師には「超音波診断装置を用いる」ことを想定したうえで書かれた本であることがわかります。


どこまで踏み込むかによっては医師法違反の問題も起き得るとした上で、助産師が超音波診断機器を「使えるように」したほうがよいと考える医師がいるということです。


本文でも「どこまで踏み込んだら医師法違反になるか」という点は明確にされていません。


また「編集者 序」では、別の医師によって以下のようにややトーンダウンした書き方がされています。

産婦人科の診療は、チーム医療が基本をなしています。助産師、看護師さんの協力がなければ医療の形態をなさないのは当然です。医師のみならず、コメディカルスタッフは超音波診断の十分な知識をもち、医師の診断、治療を理解したうえで、看護にあたることは病める女性、妊婦さん、またその家族、もちろんこれから生まれてくるであろう赤ちゃんに対して多いなる福音をもたらすことができるものだと考えます。

実際に助産師が超音波画像診断機器を使用するのではなく、「医師の診断、治療を理解」するのにまさに必要な本だと思います。
そしてそれを看護にいかすために。


助産師が超音波診断機器を使用するのであれば、「これから生まれてくるであろう赤ちゃん」の安全のために分娩監視装置を使いこなせる知識は絶対に必要ですが、超音波画像診断機器はどうなのでしょうか?


もう少しこの本の序文に書かれていることを続けます。