新生児のあれこれ 20  <皮膚がむける>

新生児の皮膚というのは、見れば見るほど不思議なものです。


朝あった傷が夕方には薄くなるぐらい皮膚の再生能力が高いのではないかと思う反面、いつもがさがさしていたりひび割れていたり、あるいはブツブツと発疹が出たり、お母さんたちの心配の種はつきないぐらいです。


<皮膚がむける、ひび割れる>


生後1日ぐらいになると、手足のがさがさが目立ってきます。あるいは沐浴のあと手のひらからボロボロと皮膚がむけてくる状態が何日も続くことがあります。


そして手足の関節部分がひび割れて、うっすらと出血していることがあります。


お母さんたちはイメージしている新生児の皮膚とは違うのでびっくりされるし、痛々しく感じられるようです。


「周産期相談318 お母さんへの回答マニュアル」(『周産期医学』編集委員会編、2009年)の「239.生まれてすぐから皮がむけるのですが?」の回答を紹介します。

解説
1.新生児の子宮内から外界への急激な環境の変化に伴う一過性皮膚変化の一つに、新生児落屑(らくせつ)がある。
2.これは、新生児の成熟度にも関係があり、皮膚の構造は成熟度評価法の項目の一つになっている。
3.胎児の皮膚は、未熟であれば非常に薄くゼラチン様の感じがする。皮膚を通して多数の静脈、細静脈が透けて見える。色も暗赤色である。
4.妊娠週数が進むにつれて薄くて滑らかになりピンク色をしてくる。そして予定日周辺では皮膚の厚さが中等度になり、表皮の剥離がみられるようになる
5.予定日を超過すると、皮膚は厚ぼったくなり、手足に亀裂と剥離がみられるようになり、さらに進むといわゆる厚く羊皮紙様で亀裂をつくるようになる。
6.したがって新生児の皮膚剥脱は生理的なことで、成熟度として評価すればよい。

つまり、皮のむけかたや亀裂の程度はその赤ちゃんの体質ではなく、胎内にいた長さに関係したものであるので心配はいらないということですね。


回答モデルには以下のように書かれています。

 生まれたばかりの赤ちゃんの大半が、程度の差はあっても皮がむけます。これは赤ちゃんが成熟しているかどうかと関係するので、必ずしも病的な現象ではなく、赤ちゃんが元気であれば全く心配はいりません。
 皮は、細かい形でむける場合もあれば、大きくむける場合もありますが、いずれも、むりにむいてとりのぞこうとはせずに自然に落ちるのを待ちます。2〜4日たつと自然にとれてきれいな肌になります。


実際にはもう少し長く、時には1〜2週間ぐらい細かい落屑が続く赤ちゃんもいると思います。


羊水の中で育ってきた胎児が、外気に触れるとともに陸上の生活に適した皮膚に変化していく。
これもまた劇的な不思議な変化だと、ボロボロの新生児の皮膚をみるたびに感じるのです。


そしてもうひとつ不思議なことは、この新生児落屑は頭皮や顔にはみられないことです。
たまに口の周りがただれて皮膚がむける赤ちゃんはいますが。
新生児の首から上と下では、世界が違うかのようです。




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