前回の記事で、「市販のお尻ふきを使うようになって入院中にひどいおむつかぶれになる新生児をみることが稀になった」という印象ですが、あくまでも1ヶ月健診が終わる頃までの「新生児」についてです。
それ以降の乳児の排泄に関しては、日頃観察をする機会がほとんどないので、私はわかりません。
市販のお尻ふきを使う前は、入院中にお尻が真っ赤になる新生児が珍しくありませんでした。
いつ頃から赤くなり始めるかと言うと、ちょうど移行便から母乳便に変化する生後2〜3日目以降です。
不思議と、胎便の時期にはおむつかぶれはまずありません。
現在でも、案外とこの新生児期の便の変化とおむつかぶれの傾向や、その対応方法に関して標準化されたものは見つけだせません。
もちろん、乳児のおむつかぶれに関しての一般的なことは書かれたものはあるのですが、この劇的に皮膚やうんちが変化する新生児期についてはまだまだ未知の世界なのではないかと思います。
勤務してきたいくつかの産科施設でも、入院中の赤ちゃんのおむつかぶれに対しては試行錯誤という感じでした。
小児科医によっても対応方法はいろいろでしたし、時代の変化によって物や考え方が増えてくることで、またさまざまな判断が増えて来たという感じでしょうか。
1990年代後半になると、こちらで紹介した創傷治療の考え方が標準化され始めて、褥瘡や傷はまず汚れを落とすことと保護することに重点がおかれるようになりました。
綿に水を浸したものでは、おむつかぶれの原因になっている便や尿が十分にとれていないので、お湯と石鹸を使って洗い流し、ワゼリンや亜鉛化でんぷん軟膏をたっぷりと縫って皮膚を保護する。
それでも悪化する場合には、治癒を助けるための軟膏を出すといった感じでしょうか。
布おむつから紙おむつになっても、まだ入院中のおむつかぶれはそれほど減った印象はありませんでした。
ところが、2000年代ぐらいに入って、市販のお尻ふきを使うようになってからは入院中におむつかぶれになって臀部浴や軟膏処置が必要な赤ちゃんが少なくなりました。
<ほんとうのところはまだわからないけれど>
さて、この私の個人的体験談と記憶だけでは、「入院中の新生児に対して、市販のお尻ふきが新生児期のおむつかぶれを予防する」といえるわけではありません。
まず、「ほんとうに入院中におむつかぶれになる赤ちゃんが減っているかどうか」という点で、調査された数字があるわけではない、あくまでも印象です。
また、もしかすると市販のお尻ふきの性能というよりは、産院側が準備した水に浸した綿だとたくさん使うのがはばかられて、ケチって拭いたために拭き残しができやすかったという可能性もあります。
あるいは、カットされた綿だと面積が小さいので、拭いたそばからその汚れをなすりつけているような状態になりやすいこともあります。
その点、市販のお尻ふきの方が面積もあり、何枚も使ってきれいにすることができている可能性があります。
ただ、「布おむつを使い、水で浸した綿で拭く」「紙おむつを使い、水で浸した綿で拭く」「紙おむつを使い、市販のお尻ふきで拭く」という時間差は、こちらの記事で書いた「それをした場合としなかった場合」の検証に近い経験になったのではないかと思います。
紙おむつはすぐに水分が吸収されるので、それだけでおむつかぶれの原因になる皮膚の損傷の機会を減らしてくれると思います。
ただ、やはり水を浸した綿だけでは、便や尿の汚れがしっかり落ちにくい、それに対しておむつかぶれに含まれている成分が皮膚の保清の効果がある可能性が高いのではないか。
そう感じているのですが、実際はどうなのでしょうか?
お尻ふきの話、もう少し続きます。
「新生児のあれこれ」まとめはこちら。