新生児

行間を読む 79 飯田線の歴史

数分歩いただけで汗が吹き出すような気温の中、飯田線のあちこちで保線工事が行われていました。 単線で片側は山や崖の斜面だったり、あちこちから湧き水や川が天竜川へと向けて流れ落ちるような状況で、厳しい天候でも安全のために働く方々に、心の中で頭を…

新生児のあれこれ 59 <新生児中毒性紅斑>

助産師になってからかれこれ30年、ずっと気になりつつもこれといった納得のいく説明にまだ出会わないもののひとつが、新生児中毒性紅斑です。 出生後しばらくすると、全身に虫刺されのような赤いボチボチが出始める赤ちゃんがいます。 中毒疹があった場所が…

記録のあれこれ 18 <新生児の生活史のために何を記録するのか>

記録はなんでもたくさん書けば良いというわけでもないし、私自身は一般的な「授乳記録」だけでも、その新生児が今どの段階にいて、今度どんな感じで変化していくかなんとなく予測できるようになりました。 体重減少や黄疸値の変化、ウンチの性状の変化、ある…

記録のあれこれ 17 <育児記録と授乳記録>

退院後も、体重の増え方が不安だったり黄疸が強くなりそうな場合には、1ヶ月健診までの間にも何度か来院していただいてフォローする機会があります。 あるいは生後4ヶ月までを対象とした赤ちゃん訪問(新生児訪問)のように、こちらから生活の場に出向いてい…

記録のあれこれ 16 <新生児についての記録>

今回もY-Sanaさんからいただいたコメントから考えたことの続きです。 SNSという「その話のどこまでがどのような事実か」を確認する手段がないという限界はあるのですが、こんさんのお話や「産後のトラブルを考える」のさとえさん、あおばさん、さらさんの時…

新生児のあれこれ 57 <新生児とはどういう存在なのか>

定義的には生後28日未満の時期の乳児を指す「新生児」ですし、一生の中で一番弱い時期というニュアンスも実感していますが、その時期の特徴を簡潔にまとめるには状況が多様すぎるのか、未だに「新生児とはどのような存在か」とまとまった内容に出会っていま…

新生児のあれこれ 56 <新生児という言葉が使われ始めたのはいつ頃か>

Y-Sanaさんからいただいたコメントに、「もし、観察に基づく新生児の生活史という視点を積み重ねていたら、『母乳育児』という言葉ではなく、『新生児の胎外生活に適応する期間の授乳方法』という(本質的な)表現になると思う」と答えました。 そう書きつつ…

赤ちゃんに優しいとは 14 <「ま〜るい」がなんとなくよさそうと広がる>

「ママのお腹・生まれたての赤ちゃんの骨格はま〜るいC字カーブ」というナレーションが聞こえてきたような気がしました。 最近ちょっと疲れていたので、幻聴だったのかなと思って検索したら、本当にムーニーの宣伝でそう言っているようです。 大丈夫でしょう…

事実とは何か 46 <新生児の低血糖>

m3.comという医療ニュースのサイトに、「医療ニュース 地方紙号外」というまとめが時々送信されてきます。 「11月13日から12月10日に読まれた地方紙の記事で関心が高かったもの」のトップが、「出産時医療ミス 適切な血糖管理せず 中津市民病院」でした。 こ…

運動のあれこれ 8 <「母乳育児」という運動から距離をおく>

人工飼育で無事に成長する動物たちのニュースを聞くと、ほっとします。 哺乳類の動物が人工飼育をされても、今のところ「動物にも『母乳育児』を」という声はなさそうなので、生き延びさせる、無事に成長させることが、安堵感の本質なのかもしれません。 な…

気持ちの問題 47 <ヒトのグルーミング>

職場は20代から70代と幅広い年齢層のスタッフがいます。 普段は相手のことを理解しているつもりになっているのですが、ふとしたことで、言葉の持つニュアンスの相違や経験して来た時代の感覚の差のようなものを感じます。 数年ぐらい前だったでしょうか、退…

新生児のあれこれ 54 <新生児期のおむつかぶれとお尻ふき>

前回の記事で、「市販のお尻ふきを使うようになって入院中にひどいおむつかぶれになる新生児をみることが稀になった」という印象ですが、あくまでも1ヶ月健診が終わる頃までの「新生児」についてです。 それ以降の乳児の排泄に関しては、日頃観察をする機会…

事実とは何か 29 <「母乳だけ」で新生児の生命が危機に陥ることもある>

「母乳にはメリットがある」ということは事実です。 ただし、全く母乳をあげられない場合でも、適切に与えればミルクで元気に育てることもできるようになりました。 ところが「母乳育児で簡単に幼い命を救えます」となると不正確な表現だし、とても危険な場…

新生児のあれこれ 51  <出生直後から飲ませることはむずかしい>

出生直後の新生児の低血糖が注目されて、哺乳瓶で糖水やミルクを補足することも大事であるという認識が再び見直される風潮が起こるのは、それはそれで新生児には朗報かもしれません。 ただ、反動のようにまた「規則的に飲ませなければいけない」「3時間以上…

母乳育児という言葉を問い直す 19 <誰がその言葉を求めているのだろうか>

こんさんから、こんさんとこんさんの赤ちゃんについて新聞記事で紹介されたことを教えていただきました。 こんさん、ありがとうございます。 昨年7月に初めてこんさんからコメントをいただき、こちらの記事やこちらの記事を書いたり、コメント欄でも往復書簡…

新生児のあれこれ まとめ

ブログタイトルの「水の中」は、こちらの記事に書いたように、誰もが水の中(羊水)から生れ出たことを意識しています。 日々、その水の生活から陸上で生きる劇的な瞬間に立ち会う仕事をしていますが、私自身が新生児のことをわかっているつもりでわかってい…

「吸わない」のか「吸えない」のか 2  <日本の授乳指導について、教科書より>

こちらの記事の続きを書こうと思いつつ、どうしても授乳の話は「母乳かミルクか」の話や「授乳がうまくいくための」テクニック的な話にそれやすいので、実はどうも気持ちが前に進みません。 「私たちはまだ新生児や乳児が何をし、どのように変化しているのか…

「吸わない」のか「吸えない」のか 1  <アメリカの授乳指導>

しばらく「母乳」や「授乳」関連のまとめが続きましたが、こちらの記事でお約束したOKEIさんのご質問についていろいろと考えてみたいと思います。 そのご質問を再掲します。 ところで、ふぃっしゅさんに教えていただきたいことがあります。扁平乳頭はアメリ…

観察する 4 <「赤ちゃんを一瞬で泣き止ませる方法」>

先日、「赤ちゃんを一瞬で泣き止ます」テクニックをテレビで見かけました。 検索してみたら、「キャリア30年の小児科医が伝授する『赤ちゃんを一瞬で泣きやませる方法』がすごい」が情報の元のようです。 優しく赤ちゃんに声をかけている小児科の先生で、そ…

赤ちゃんに優しいとは 6 <普遍的なものと助産師の思い込みのはざまで>

前回に続き、 「新生児ベーシックケア」(横尾京子氏、医学書院、2011年)の「自宅出産で生まれた新生児:Mさんの体験から」について考えてみようと思います。 今回は出生後から1ヶ月までの部分です。 計測後、産着が着せられた。その産着は夫がかつて着た産…

赤ちゃんに優しいとは 5 <「自宅出産で生まれた新生児:Mさんの体験から」>

「新生児ベーシックケア」(横尾京子氏、医学書院、2011年)の「出生後24時間以降、新生児早期のケア」では、「高ビリルビン血症(黄疸)のスクリーニング」「排泄の適応とアセスメント」「母乳育児支援」「皮膚のケア」「新生児マススクリーニングと聴力スク…

赤ちゃんに優しいとは 4 <「家族中心」とは「自宅のような」の同義語なのか>

「新生児ベーシックケア」(横尾京子氏、医学書院、2011年)の内容について続きます。 なぜこの本をこうして記事について書いているかというと、「『医療を使わない助産』のようなものの幻想と幻滅」の記事の最後に書いたように、1980年代終わりごろに私が助…

赤ちゃんに優しいとは 3 <「新生児を1人の人間として尊重する」とは>

前回紹介した「新生児ベーシックケア」(横尾京子氏、医学書院、2011年)の中に、「新生児ケアの視点」(p.20~)として「新生児を1人の人間として尊重する」「家族中心の新生児ケア」「生理的に逸脱しないよう予防的ケアを行う」の3つの考え方が書かれていま…

赤ちゃんに優しいとは 2 <「家族中心のケア」って何だろう?>

今回からしばらくは、「新生児ベーシックケア」(横尾京子氏、医学書院、2011年)を参考にしてみたいと思います。 私が1980年代終わりに助産学生だった頃、都内にもまだNICUは数えるほどしかなく、そのうちのひとつの産院でNICU実習をさせてもらった記憶があ…

 赤ちゃんに優しいとは 1 <赤ちゃんは飲みながら排泄をする>

こちらの記事で「下水道についてのあれこれ」の過去記事を掲載しました。 この「下水道についてのあれこれ」は、赤ちゃんのうんちやおしっこも「屎尿」であるという視点から、「おむつなし育児」はどうなのかについて考えたものです。 それらの記事をたどっ…

新生児のあれこれ 49 <新生児の声は誰が聞いてくれるのだろう>

昨日の記事で、入院中の生後2日目に添い寝中に脳性麻痺になったと考えられる事例報告を紹介しました。 その報告書の「4. 今後の産科医療向上のために検討すべき事項」の一部を紹介します。 1)当該分娩機関における診療行為について検討すべき事項 母子同室中…

新生児のあれこれ 48 <添い寝授乳のリスクマネージメント>

入院中のお母さん達に、ベッドでの添い寝授乳や添い寝を説明する際には児の転落と窒息、その2点がまず危険性として思い浮かぶのではないかと思います。 ところが、こちらの記事で「添い寝授乳なら窒息の危険性はない」という認識が産科スタッフにもあること…

添い寝授乳と添い寝

産後、特に初産婦さんの場合には体を思うように動かせなかったり、傷の痛みが強い場合など、赤ちゃんを抱っこしたり授乳の姿勢をとりつづけることもままならないことがあります。 あるいは、入院中は比較的眠っていてくれた赤ちゃんも退院後あたりから急激な…

気持ちの問題 12 <「赤ちゃんと母親が一日中24時間、一緒にいられるようにすること」>

今日の記事は「帝王切開のケアを考える」の続きですが、こんさんのこちらのコメントに書かれていることを考えてみようと思います。 私の場合は、特に息子の事故に最も関係ある条文について反論があります。 「7. 母子同室にする。赤ちゃんと母親が一日中24時…

帝王切開で生まれる 10 <帝王切開で生まれた新生児の経過の特殊性は観察されていないのではないか>

だいぶ間が空きましたが、「帝王切開で生まれる」では帝王切開で生まれた新生児の特殊性について主に腸内細菌叢の変化から考えてみました。 ブログを始めてから3年半ほどが過ぎましたが、「母乳とミルク」で悩むお母さんからのコメントを多くいただきました…