こちらの記事で、「赤ちゃんにおむつはいらないー失われた身体技法を求めて」という抄録を紹介しました。
赤ちゃんの非言語的なメッセージを受け止めるという身体技法を大人の方が有していたのではないか?
それを受けとめられなくなった大人のあり方こそ問われているのではないか?
私も最初、東南アジアで授乳中のお母さんが赤ちゃんのちょっとした動きに反応して、パッと大地に向けて排泄をさせているところを見たときには同じように感じました。
何か私たちは失っているのではないか?と。
これはもしかしたらいわゆる先進国、物質的に豊かで高度に管理された国に住んでいるが故に、いつでも湧き上がってくる不安なのかもしれません。
本当に私たちは赤ちゃんの排泄に関する非言語的なメッセージを受け止めるための身体技法を失ったのでしょうか?
<排泄のサイン>
花王メリーズの「トイレ・トレーニングってなぁに?」のサイトに、「こんなしぐさにも注目!”おしっこシグナル”」が書かれています。
急に動きがとまる、前に手をやる、そわそわもじもじする、「あ、あ」と声を出す、表情がしかめっつらになる、おちんちんおむつに手をやる、急に不機嫌になる
これはトイレ・トレーニングを始める頃、本文には「2歳を過ぎてから考えれば十分です」と書かれていますが、幼児の表現です。
おそらく、お母さんやお父さんたちは誰に教わるまでもなく、もっと早い時期からこういう排泄のサインにいつの間にか気づいていらっしゃることでしょう。
出産直後は赤ちゃんを抱っこするだけで緊張していたお母さんも、1ヶ月健診頃になるとおむつ交換や抱っこも手慣れてきます。
「そろそろ起きると思います」「そろそろうんちかもしれません」など、本当にその赤ちゃんのペースにアンテナを向けていらっしゃいます。
1ヶ月間、緊張しながら全身で赤ちゃんのことを観察し続けてデーターが蓄積されたという感じですね。
現代の日本のお母さん、そしてお父さんも、決して何か「身体技法を失った」わけではないのでしょう。
それでも、東南アジアのお母さんたちが授乳途中にパッと赤ちゃんの向きを変えて排泄させる様子はとても自信に満ちたものに見えてしまうのかもしれません。
私たちが、何かを失ったと思わせるような。
<新生児〜乳児の排泄の変化>
生後1ヶ月頃でも、お母さん達はすでに赤ちゃんの排泄の気配を感じられるぐらいになっています。
あるいはちょっと関心があれば、私のように出生当日の新生児の排泄のサインもわかるようになることでしょう。
では、その頃から「排泄」に注目したトレーニングをすることに意味があるのでしょうか?
首がすわっていないのに排泄の姿勢をとらせることもそうですが、排泄の「自律」という点でも、やはり時期が早いのではないかと思います。
生まれたその日から、新生児のウンチやおしっこは量も性状も回数もかなりめまぐるしく変化します。
一日たりとも同じことはないと言っても過言ではないでしょう。
たとえば出生当日は何度も胎便はでますが、おしっこはほとんど出ないこともあります。
これも不要な水分のロスを防ぐための自律した排泄のしくみなのかもしれません。
生後1〜2日目あたりで胎便からミルクや母乳を消化したものが含まれた移行便に変ります。このあたりで、急にうんちやおしっこの回数が減ります。
そして生後3日目ぐらいから、母乳便・乳汁便になるとともにうんちとおしっこの回数・量が増えていきます。
わずか数日の間にも、量や回数が変化していきます。
そして生後2〜3週間目あたりでよくあるのが、「うんちが急に出なくなりました。便秘でしょうか?それとも飲ませる量が足りないのでしょうか?」という質問です。
体重増加期に入った新生児は急におなかが大きくなりますし、しょっちゅういきむような苦しそうな様子があるので、便秘で苦しんでいるのではないかと見えるのでしょう。
ところが出てきたうんちは、柔らかいものです。オムツからはみ出すほどまとまって出てきます。
母乳やミルクが主体の数ヶ月は便秘とは考えなくてよいし、数日ぐらいまで待って大丈夫というのが基本的な対応です。
体重増加に伴い腸も発達して容量も増えていくので、肛門に達するまでに時間がかかるのかもしれません。よくわかりませんが。
数日に1回といううんちのパターンが何回か続いたあと、またうんちの回数が増えていきます。
生後3ヶ月ごろにはうんちの回数もまとまってくる赤ちゃんもいますし、反対にまだ一日10回ぐらいうんちがある赤ちゃんもいます。
そして離乳食が始まると、またうんちの量・性状そして回数も変化します。
そして「月齢別 おしっことうんち」にあるように、1〜2才でおおよそ以下のようになります。
おしっこ1日10回
一晩中おしっこをしない日が増えてきます
うんち1日1〜3回、うんちをする時間帯がほぼ決まってきます。
こうしてみると、新生児から乳児、そして幼児期前半まで、排泄がいかに自律したしくみによって行われているかがわかるのではないかと思います。
排泄だけでなく、手の動きや足の動きのように、赤ちゃんの全身が、一見「目的のないような行動」でも自主トレーニングのような動きをせざるを得ないしくみで、次の動きにつながるようにプログラムされているのではないかと思えるのです。
それが「自律」と言えるのではないでしょうか。
であるとしたら、そばで見守ることが大事なこともあるでしょう。
手を出しすぎずに。
1〜2歳頃までの成長発達というのは、赤ちゃん自身にすれば「排泄」のことだけではないわけです。
赤ちゃん自身の関心や欲求によって、自由に自ら行動を広げいろいろな動きに挑戦していく時期だと言えるのではないでしょうか。
そしてお母さんやお父さんも、「正解はわからないけれど」赤ちゃんのしぐさや声からいろいろな変化を感じ取って関わってみる、それで十分ではないかと思うのです。
「新生児のあれこれ」まとめはこちら。