赤ちゃんに優しいとは 1 <赤ちゃんは飲みながら排泄をする>

こちらの記事で「下水道についてのあれこれ」の過去記事を掲載しました。


この「下水道についてのあれこれ」は、赤ちゃんのうんちやおしっこも「屎尿」であるという視点から、「おむつなし育児」はどうなのかについて考えたものです。


それらの記事をたどっていくと、「排泄の『自然』と『不自然』」という記事があります。
東南アジアで暮らしていた時に、授乳をしているおかあさんが赤ちゃんのしぐさをみてぱっと赤ちゃんのお尻を自分の体から離すと、赤ちゃんは大地に向かっておしっこやうんちをするという、いわば「元祖おむつなし育児」をみたときの体験です。


看護学生や助産学生になるまでは、私の身近に赤ちゃんもほとんどいなかったし、授業では「おむつを替えて、授乳をさせ、ゲップをさせて寝付かせる」としか習いませんでした。
赤ちゃんはまずおむつをきれいにして(排泄の処理をして)から、授乳をする。
この順番以外の発想はありませんでした。


この元祖おむつなし育児を初めて東南アジアでみた時には、すでに助産師として働いていましたから、新生児の授乳を何百回いえ、何千回としていたはずなのに、「赤ちゃんは飲みながら排泄をする」という基本的な行動さえ自分自身が気づいていなかったことに愕然としたのでした。


いえ、気づいていたのに、この順番を頑にかえようとしないほどの思い込みがあったのだろうと思います。


<おむつ交換が先か、授乳が先か>


さて、その国ではおむつをしている場合もしていない場合も、少し赤ちゃんがぐずり始めるとお母さん達はぱっとおっぱいをくわえさせ始めます。


日本の産科スタッフやお母さんであれば、赤ちゃんが起き始めるとまずおむつをみる人がほとんどの印象です。


この行動の違いは何か。
日本のお母さんたちは、ずっとこうしてきたのでしょうか。
日本も以前は赤ちゃんがぐずればまずはおむつではなく、抱っこしたり授乳をしていたものが、旧産婆と近代産婆による衛生知識の普及とか、育児書とか育児オーガナイザーが広がり始めてから、育児方法として広まったのでしょうか。



ずっと気になっています。


そして出産を終えて少し休養がとれてから、赤ちゃんの世話の仕方をお母さんに説明する時に、実は私自身は一番、説明になやんでいる部分です。


「お母さんのしたい順番でいいですよ」
「激しく啼いている時にまず抱っこのほうが落ちついたり、おっぱいを吸った方が落ち着くようなら、まずはそれをしてみたらよいとおもいますよ」
「そのうち、飲みながら赤ちゃんはお腹が動いてうんちをしたりおしっこをするので、タイミングを見ながら、あとでおむつを替えてもいいと思いますよ」


こういう説明でよいと思うのですが、おそらく日本中、こういう説明はあまり見聞きする機会はなくて、お母さん達も事前に「おむつ交換⇒授乳⇒寝付かせる」という「知識」がどこかでインプットされているし、他のスタッフにすでにそう説明されていることもあるので、お母さんたちは私の説明を聞くと一瞬、キョトンとするかたがほとんどです。


それはそうですよね。
私も初めて東南アジアでその順番を見た時には、冒頭の「排泄の『自然』と『不自然』」に書いたように驚いたのですから。


そしてその驚いた私が、現地のお母さんにはおおいに摩訶不思議と驚かれたのでした。

授乳をしていると、赤ちゃんのしぐさでうんちやおしっこのタイミングがわかることがなぜそんなに驚くことなの?
日本ではどうしているの?


「赤ちゃんに優しい」ってどんなことだろう。
不定期になりますが考えてみようと思います。




「赤ちゃんに優しいとは」まとめ。

2. 「家族中心のケア」って何だろう?
3. 「新生児を1人の人間として尊重する」とは
4. 「家族中心」とは「自宅のような」の同義語なのか
5. 「自宅出産で生まれた新生児:Mさんの体験から」
6. 普遍的なものと助産師の思いこみのはざまで
7. どこまで検証されているかを整理する
8. 赤ちゃんや子どもの事故の情報を共有するために
9. 赤ちゃんのための情報を伝えるには
10. 「赤ちゃんに優しい」と思い込み
11. 「赤ちゃん」ってどの段階なのか
12. 大人の方便
13. 江戸時代の「大人の方便」
14. 「ま〜るい」がなんとなくよさそうと広がる
15. 災害時の授乳方法に本当に必要な情報は何か
16. ヘルメット治療って?