記録のあれこれ 17 <育児記録と授乳記録>

退院後も、体重の増え方が不安だったり黄疸が強くなりそうな場合には、1ヶ月健診までの間にも何度か来院していただいてフォローする機会があります。
あるいは生後4ヶ月までを対象とした赤ちゃん訪問(新生児訪問)のように、こちらから生活の場に出向いていく機会があります。


そういう時に、お母さんが大事そうに見せてくださるのが育児記録です。
特に初めて赤ちゃんの世話をする方は、びっしりと日常の記録が書かれています。
何時にうんちやおしっこをしたか、何時に何をどれだけ飲ませたか、何時にどんな啼き方でいつ眠ったのか、熱が何度だったかといった赤ちゃんの状況を観察し、記録されています。


助産師になったばかりの頃はお母さんたちが書いている内容が目に入っているようで見えていなかったと、最近、つくづく思います。


当時は、私自身ができるだけ母乳でということしか視点になかったからだと思いますが、「母乳の回数はどれくらいか、ミルクの量はどれくらいか。体重増加はどうか」が重要な情報でしかなく、せっかくお母さんたちが全身で赤ちゃんの生活を観察したことを記述している貴重な記録が目に入っていなかったのでした。
そればかりか、「授乳で大変でしょうから、あまり細かく書かないでも大丈夫ですよ。その分、休息をとってね」と、今思えば方向違いのアドバイスまでしていました。


<分娩施設の「授乳記録」>


いつごろからでしょうか。
卒後10年ぐらいしたころからだったような気がするのですが、生後2〜3日までの変化夕方から活発になる新生児の生活などが見え始めてきました。


特に出生直後から劇的に変化していく便や腸蠕動に注目すると、新生児の生活とその変化がパズルを解くようにみえてきました。
それでこちらの記事の冒頭に書いたように、「哺乳行動とは、授乳、消化・吸収・排泄の統合的な行動」ではないかあたりまで行きつきました。



ところが、だいたいどの分娩施設でも新生児の記録というと、簡単な「授乳記録」のことを指します。
それ以外には温度表にその日の体重と、黄疸値、便尿の回数、臍の状態などを記入して全体像がわかるものぐらいでしょうか。


「授乳記録」は、何時に母乳を吸わせたか、ミルクをどれくらい飲ませたか、いつウンチやおしっこが出たかぐらいしか記入されていません。


出生当日の新生児と生後3日ぐらいの新生児では、その生活のパターンもまったく違うのに惜しいなあと思います。
あるいは日中と夜でも違います。
そういう変化や個別性が何も見えない記録しかありません。


新生児の変化も観察されていないので、お母さん側についてのスタッフの記録もまたラッチオンとポジショニングを「修正しました」という授乳のテクニックの記録が中心です。


ああ、本当に惜しいなあ。
お母さんたちが新生児の変化を観察し、記録しようとしている努力に比べて、私が助産師になってからほとんど変化していないのが分娩施設で使われている「授乳記録」です。



新生児の生活史は誰がどのように観察し、記録にしてくれているのでしょうか。


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