アルコールといっても飲む方の話ではなく、医薬品のアルコールです。
最近では医療機関だけでなく、お店などの入り口でも珍しくなくなった手指消毒用アルコールですが、案外歴史はまだ浅いのではないかと思います。
記憶をたどっていくと、病院内でアルコールの手指消毒剤、正式名称は速乾性擦式アルコール製剤のようですが、それが広がりだしたのは1990年代前半ごろだったように思います。
アメリカのCDCによる院内感染標準的予防策が作られたのが1996年ですが、それよりも少し前からすでにこの手指消毒アルコールは使われ始めていたように記憶しています。
それでも現在、「感染対策の基本 手指衛生」に書かれている以下のような理解が広がるまでにはもう少し時間が必要で、「アルコールだけでは手はきれいにできない」と流水による手洗いの方が重視されていたのではないかと思い返しています。
もちろん、流水と石鹸で十分に手を洗った方がよいのですが、肝心の手を拭くタオルが使い捨てのペーパータオルではなく共用の布タオルがまだ使われていたり、まだまだ混乱期でした。
速乾性擦式手指消毒剤は、手指付着菌を殺菌する効果が高く、即効性・速乾性を有するため時間がかからず、手洗い場を必要としないことから、現在では病棟における手指消毒衛生の第一選択と言われています。
1990年代半ばになると、スタッフだけでなく入院患者さんや面会者も使えるように、病棟や病室の入り口に手指消毒アルコールが設置されるようになりました。
ただ当時の製品はアルコール液そのものでしたので、1プッシュすると廊下に液が飛び散って床が汚れやすかったり、身長の低い小児が使うと目に入ってしまうなど使い勝手が悪いものでした。
最近ではゲル剤が主流になり、飛び散り方も少なくなりました。
<一般社会に広がりだしたのはいつ頃か>
今ではドラッグストアーで、携帯用のこの手指アルコールも種類も豊富に販売されています。
あるいは、スーパーやレストランの入り口に設置されているのも珍しくなくなりました。
ところが10年ほど前は個人用に購入したくても見つからず、職場で医療用のものを購入していた記憶があります。
いつ頃から社会に広がりだしたのでしょうか?
こうした製品の生産量や流通量を調べればわかりやすいのかもしれませんが、もしかしたらこれがきっかけではないかというあくまでも個人的な想像範囲の話です。
2000年代というのは、感染症の怖さを身近に感じることが何度かありました。
その前の1990年代はO157とか狂牛病が話題になりましたが、まだそれほど人類と感染症の闘いを思い起こさせるほどでもなかったのかもしれません。
2002年のSARSや2009年の新型インフルエンザは、感染症が国内だけでなく世界中にあっという間に広がる怖さを印象付けたものでした。
あるいは国内でも2006年ごろからのノロウィルスの流行は、食中毒が春や夏だけでなく1年中起こるものだということを認識させたものでした。
このあたりから、あの手指消毒アルコールも一般に広がっていったのかもしれません。
ただ、アルコールがウィルスを不活化させる「効果」があるとはいっても、呼吸器感染症の拡散予防はまずは咳エチケットを守り、感染を拡大させる可能性がある人は外出をしないことのほうが大事ですし、ノロウィルスなどもますは汚染されたものに直接触れない、触れたら流水と石鹸でよく手を洗うことが大事です。
通常の生活では、手洗いを十分にできればこうした携帯用アルコールは不要かもしれません。
ただ、私も常時持って歩いています。
特に公衆トイレを使う場合に、便座を消毒しています。
最近では、駅のトイレでも便座用の消毒剤が完備されているところもありますが、まだないところもあります。
先日、「感染症が心配な人たちへ 便座シートには意味がない」という記事を目にしました。
たしかに洋式便座に座っただけですぐに感染があるわけではないのですが、それは皆がきれいに使っていることが前提ですね。
まだまだ、自分が使ったあと汚れていてもそのままということもよくあります。
洋式便座のトイレには、消毒用アルコールが常設されるといいなと思っています。
そのまえに、床は不潔ですし、さらに排泄物が飛び散りやすいあの和式トイレはそろそろなくしてもよい時代ではないかと思います。
あ、トイレの話になってしまいましたが、アルコールについてもう少し続きます。
「記憶についてのあれこれ」まとめはこちら。