高校生ごろに重厚な開き戸に憧れていたのですが、看護学生になってすぐに現実のものになりました。
学生寮も学校も、あるいは病院もあちこちが開き戸でした。まあ、北欧調ではなかったですけれど。
1980年代の病院はまだ大部屋が基本で、個室はVIPか重症、急変、感染症あるいは終末期の方に限られていたのですが、その個室には必ず重い開き戸がつけられていました。
大部屋の入り口はどうだったかというと、ちょっと曖昧な記憶になっているのですが、ドアはなくてカーテンだったような。
ドアがついている個室を巡視する時には、音を立てないようにそっと開けなければ患者さんを起こしてしまうので、ちょっと面倒な扉になりました。
*90年代に入ると引き戸が導入されるようになった*
90年代に入ると、あちこちで病院の建て替えの時期になりました。
新しい病院には、まず個室が増えました。希望で個室を選択できるようになったからです。
大部屋にも洗面台がついたり、ラウンジができてそこで食事や面会ができるようになったり、入院中の環境に「快適性」が加わりました。
その中で私にとって印象的なことは、引き戸が増えたことでした。
開き戸というのは、外側に開けるにしても内側に開けるにしても、向こうに人や物があるとぶつかりやすく、思わぬ事故になります。
また、ストレッチャーや車椅子での移動の時に、必ずドアストッパーを用意しておかなければ閉まってしまうという不便さがありました。
また、ドアノブを回すという動作ができにくい人もいます。
バリアフリーという意味で、引き戸を取り入れることになったのでした。
また開き戸に比べて、引き戸の方が音がせずに軽く開閉できますから、巡視の際のストレスも少なくなりました。
そして、同じ頃に院内感染標準予防策の考え方が導入され、「一手技一手洗い」や入り口のアルコール消毒などが広がりました。
引き戸の広がりもまた、それが影響していたのではないかと思い返しています。
今回の新型コロナウイルス感染症対策で、あの頃に引き戸にした病院施設は、もしかするとその効果を実感されたかもしれませんね。
ドアノブを掴んでドアを開けるというのは、感染症に対応するにはいろいろな意味でリスクと無駄がありますからね。
ただ、引き戸を導入するためには引き戸の収納部分の余裕が必要ですから、メリットは大きくても現実には狭い土地に建てるために諦めた施設もあるかもしれません。
90年代に病院設備に引き戸を取り入れた頃、どのような動きがあったのでしょうか。
歴史を知りたくなりました。
「10年ひとむかし」まとめはこちら。