世界はひろいな 14  <香りつきアルコール>

香りつきアルコール。
カクテルのような飲む話でははく、今日も手指消毒用アルコールの話です。


医療従事者とこの消毒用アルコールは切っても切れないほど、日常の必需品です。
まずは、注射の前の皮膚消毒が一番なじみがあるかもしれません。
それ以外に、体温計など医療用品の消毒にも使います。


アルコール綿(めん)は医療現場にはなくてはならないものです。


このアルコール綿も私が看護学校に入学した1970年代終わり頃から考えると、当時は予想もしないほど変化をしました。


アルコール綿は、手作りでした。
夜勤の時間が空いたときに、まずは脱脂綿を切ることから始ります。まだカットされた既製品はなくて、広げると何mかになる綿を切っていました。


その切った綿を消毒用アルコールに浸して、作り置きしていました。


そのうちにカットされた脱脂綿が販売されるようになって、アルコール綿作りに時間をとられることがなくなりました。


1990年代前後から、この作り置きしたアルコール綿の効果について少しずつ新たにわかったことが広がりました。
「作り置きしたものはアルコールが揮発して、十分なアルコール濃度を保ちにくい」
それまでは金属製の容器だったものから、密閉できるタッパーのようなものになりました。


さらに「作る段階や使う時に多くのスタッフの手に付着した雑菌と、アルコール濃度が低くなることにより、アルコール綿を介して感染も起こりうること」がわかりました。


今思えば、1980年代から90年代初めまでの感染対策に対する知識というのは不十分だったとヒヤリとしますね。


現在では一回分を密封した製品が導入されています。



アルコールは油分などもよく落としますから、ナースステーションの机の上を拭いたり消毒以外に重宝します。


2000年代頃から一般社会にアルコールが広がるよりもだいぶ前から、私は薬局でこの消毒用アルコールを自宅用に購入して使っていました。


そんな消毒用アルコールになじみのある私でも、東南アジアでの使われ方には驚いたのでした。


<アルコールを日常的に使う国がある>


難民キャンプの事務所では、看護スタッフだけでなく現地の事務スタッフの机の上には必ず500mlのアルコールが置かれていました。


時々それを直接手に取り、腕や首などに擦り込むのです。


1980年代半ば当時の感染予防対策の知識としては、アルコールよりは洗った方が細菌を落とすことができるはずですし、東南アジアのような熱帯の国々ではこれほどアルコールで消毒することが大事なのかと驚きました。


そのうちに、医療施設だけでなく街中のあちこちで携帯用のアルコールを持っている人がたくさんいることがわかりました。
小さなお店でも、50mlぐらいの小さな瓶から500mlのものまで何種類かのアルコールが普通に売られています。


どうやら感染予防が第一の目的ではなく、あのひんやり感がまずは好まれているようでした。
暑い国ですからね。
ついでに、なんとなく消毒した安心感なのでしょうか。


<香りがついたアルコール>


日本国内で販売されているアルコールは、現在にいたるまで私は無香料のものしか見たことがありませんが、その国で販売されているものにはメーカーによっていろいろな香りがつけられていました。


難民キャンプの医療用に使われていたアルコールも、香りがついていました。


ひんやり感、消毒した感、そしてついでにちょっとしたフレグランスの代わりといった使い方だったのかもしれません。


日本では絶対に手に入らないその香りがついたアルコールを、その国に行くたびに何本も買って帰りました。


ところでアルコールは「手指殺菌・消毒剤の科学」の「4.エタノール」(p.16)を読むと、第4種危険物なので消防法の規制があり、80Lまでという限度まであるのですね。

病院の場合はほとんど少量危険物保管施設ではないので、この場合、甲種防火扉で区画された各病棟階ごとの規制になる。病室の入り口の手すりにラビング剤(消毒用エタノール濃度の速乾性手指擦式剤)を設置する場合は、合計で80Lが限度になる。
さらに同じ階にエーテル、アセトン、イソプロパノールなどの有機溶剤や大豆油、オリーブ油などの油類が保管されていれば、それらの数量分も差し引いてラビング剤を減らさなければならない。

へぇーー。


昨日と今日の記事を書こうと思い立ったのは、2001年に最後に持ち帰ったその香りつきアルコールの未開封の容器を見つけたからでした。


ちょうど9.11の直後でしたから手荷物の検査が厳しくなった頃でしたが、たしか数本のアルコールを購入して荷物に入れていました。
よく引っかからなかったものです。


香りつきのアルコールを持ち帰って何に使っていたかというと、ピアスの消毒にけちけちと使っていました。
次にいつその国にいけるかわからなかったので、郷愁とともに。


残っていた貴重な1本ですが、未開封のアルコール用品の使用期限っていつまでなのでしょうか。
こちらを見ると、「一般に医薬品は未開封の場合、製造後3年間」と書かれています。


13年前のアルコール、変質はしていはいないと思いますがあけるのが怖いのと、もったいないという気持ちで揺れています。
日本でも香りがついたアルコールが発売にならないかなぁ。




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