母乳のあれこれ 35 <「母乳を与えることは社会階級のはしごを登るチャンス」>

1990年代に医療の中にも「科学的根拠に基づく医療」という言葉が広がりました。
「科学的とはどういうことだろう」とずっと逡巡してきました。
とりわけ、膨大な数の「科学的」「医学的」な装いの論文に圧倒されています。


2009年頃から「ニセ科学」という言葉を知ってから、「科学的な話」は専門的過ぎてお手上げでも「科学を装った話」を見分ける智慧を学びました。
大阪大学菊池誠教授の「ニセ科学とつきあうために」は、「科学を装った話」に惑わされないための知識がまとめられています。


ニセ科学は白黒つける」(p.8)「ニセ科学は脅かす」(p.9)「ニセ科学は願いをかなえる」(p.10)、そして「個人的体験と客観的事実」(p.10)、この4点を知っているだけで頭の中を整理できるのではないかと思います。


日本でもカンガルーケアに関して「願いをかなえる科学を装った話」があったことはこちらに書きました。


イギリスだとさらに、「母乳を与えることは社会階級のはしごを登るチャンス」という研究まであるようです。


<「社会階級」とは何か>


社会階層と社会階級には専門的にはいろいろと差があるようですが、そこまでの知識はないので、社会階級を参照します。

社会的な階級のほとんどは、人の出自した人種や門地、所属する宗教や信奉する思想など、種々様々な指標に基づいて振り分けられるもので、他者に認められる事によって成立する。

歴史的にみれば、階級は、生まれや家柄によって固定され、一生涯の間には大きく変動することが少ないものが多かったが、現代の社会に対する貢献や、比較的自由に行われるようになった階級をまたぐ婚姻、改宗などによって変動しうるものである。

また近代以降、資産による階級格差は、世界的な資本経済の発展のなかで拡大を続けてきたが、経済の発展は同時に貴族のような歴史的な階級であっても資産の裏付けがなくしては優位の階級としては地位を保てず、新たに企業家や、高級官僚のような新興階級に交代してきた

王制というはっきりした社会階級があるイギリスで、「階級のはしごを登るチャンス」への熱望は日本に住む私にはわからない世界があるのかもしれません。


母乳で賢い子どもに育てて、将来は出世して階級を超える手段になる。
それって母乳の効果というより、「親の願い」ですけどね。


そして王制が崩れない限りそうした社会階級はなくならないわけですから、これは人々の「静かな革命」願望でもあるのでしょうか。


ということでしばらく母乳関連の研究について書いてきましたが、母乳に限らず人生で心がざわつくような情報を目にしたら、冒頭の4つのポイントと「野心的研究課題」という言葉を思い出せば、少し心が落ち着くかもしれません。どうぞお試しあれ。
おしまい。




「母乳のあれこれ」まとめはこちら