鵺(ぬえ)のような 11  「実証実験」という感覚の広がり

最近、ニュースでしばしば耳にする実証実験という言葉に引っかかっているのですが、いつ頃からどのような感じで広がったのでしょうか。

ちなみに「PRTImES(プレス・ニュースリリース配信サービス)」というサイトで検索すると、5月だけでも40件以上の「実証実験」についてのニュースがありました。

 

1990年代に入る頃から、医療の分野では「医療安全とリスクマネージメント」、「根拠に基づく医療とかエビデンス」そして「インフォームド・コンセントとか接遇」あたりで大きく変化した印象があります。

 

思い返せば、それまでの時代は仮説の段階でも「こうすれば効果がある」と言ったものがちの世界でした。

そしてそれが権威となり、広められていった時代でした。

 

1990年代に入り、エビデンスという言葉が浸透しました。

私の浅い理解ですが、「それをした場合としなかった場合を比較して、効果が認められれば標準医療になる」あたりでしょうか。

 

少なくとも仮説をそのまま世に広めても、どんなに有名な人が発表しても、科学的な手順を踏まなければ信頼できるレベルではないというところまで整理されたのだと思います。

とりわけ、人の生命に直結する医薬品や医療技術は治験も行われます。

 

仮説から効果を認めるまでにかなり厳密な段階を経る現代の医療の世界ですが、「実証実験」という言葉を耳にしたことは私はありませんでした。

 

 

*実証とは*

 

実証という言葉も日常的には使われていても、医療の中ではあまり耳にしたことがなかったのですが、頼みの綱のWikipediaにも説明がありませんでした。

 

「goo辞書」には以下のような説明がありました。

1. 確実な証拠。確証。「ーのない仮説」

2. 確かな証拠を持って証明すること。事実について明らかにすること。「推理の正しさをーする。」

3. 漢方で、病状のー。邪気の亢進(こうしん)した状態。水毒・食毒・血毒などが体内に停滞することにより引き起こされる、→虚証。

 

「確かな証拠を持って証明すること」。あの電動キックボードの実証実験で考えてみると、何を証明できたのだろう。

事実という言葉は悲しいかな、"非事実”ということを合わせ持つとすれば、実証とはなんだろう。

 

「漢方」とつながりがある言葉だったから、世の中にこの「実証」という言葉が広がりやすかったのかもしれませんね。

通常医療の中で代替療法との距離の取り方に私自身は葛藤してきたので、やはり実証実験という言葉は医療の中には居場所がなさそうだと、感覚的にですけれど納得したのでした。

 

 

リスクマネージメントとは異なる「願いをかなえる」ための実験*

 

 

この感覚の差が新型コロナウイルスへの対応でも、予防接種とかマスクとか「空間除菌」とか、微妙な理解の違いを社会に広げるのかもしれない。

 

少し検索した印象では、2010年代ごろからぼちぼち「実証実験」という言葉を使ったニュースがあったようですが、誰がどんな目的で使い始めたのでしょうか。

その影響は、どれくらい後にどのような形で社会に現れるのでしょう。

 

「実証実験」という言葉が指しているものは、どちらかというと仮説(願い)をかなえるための野心的研究に近いニュアンスかもしれませんね。

科学っぽい手法だけれど、科学ではないような、そんな感じ。

 

 

 

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