「自分が生まれたときはどんな感じだったか」、一度は親に尋ねるのではないかと思います。
私が小学生ぐらいの頃に、やはり母に尋ねました。
「元気に生まれてうれしかった」とか「ほっとした」という言葉を期待していたのに反して、母から返ってきた答えは、「あんなつらくて恥ずかしいことは本当に嫌だった」「あなたが生まれるまでは腰痛で這って歩くぐらいだったのに、おばあちゃん(義母)からは怠け者みたいに言われた」と、うらみつらみの感想でした。
あ〜すみません。3800gぐらいの胎児だったから重かったのでしょうね。
小学生の私には、なんだか自分の存在が喜ばれていなかったのかとがっかりしましたが、この母のありのままの気持ちを聞けたことは、その後、助産師になってから出産・育児とリアリテイショックを考えるのに役にたっているのではないかと、今は感謝しています。
妊娠・出産・育児は、「こんなはずじゃなかった」の連続といえるかもしれません。
それまでの人生なら、頑張ればある程度の夢見ていた結果を得られることもあるのでしょうが、子どもという他者が入り込んで来たとたん想定外のことが起きたり、プライドもかなぐり捨てていかなければいけないことが起きることでしょう。
あるいは「こういう育て方をすればこういう人になる」という方程式がまったくなくて、親が良かれと思っても、子どもはそれを反面教師にして別の道へと飛び立ってしまうこともありますしね。
大きな不安があるからこそ、「これがよい母親」のようなイメージを求めるのかもしれません。
それ自体が悪いことではなく、適当に取り入れたり途中で引き返したり、試行錯誤でよいのではないかとは思います。
子どもに実害さえなければ。
<「母になる」ことがファッションになる>
さて、昨日の記事の最後に「『母になる』ことのファッションが形を変えながら繰り返されているのかもしれないと思う記事」を見つけたことを書きました。
CREA WEBの「水疱瘡日記 前編」と「水疱瘡日記 後編」です。
少し長くなりますが、前編・後編をそれぞれそのまま紹介します。どちらも娘さんの写真が載せられていて心が痛むので、上記サイトへリンクされるよりも引用文を読んでくださればと思います。
前編は2013年2月17日の日付で書かれています。
年の瀬せまる昨年のクリスマス直前、我が家に驚きのニュースが飛び込んできました。
一昨日に我が家に遊びに来て、一日中娘と遊んでいた3歳の女の子が次の日熱を出していたとは聞いていたけれど、今日になってそれが水疱瘡だったと知らされたのです。
急いで調べてみると水疱瘡の潜伏期間はおおよそ2週間。年明けのそのあたりはどこかに娘と旅行に行こうと思って仕事もしばらく入れていなかったので、私の気分は俄然盛り上がり、是非ともこのチャンスをものにしたい!と娘が水疱瘡をもらっていますように、と祈りました。
私は娘をできるかぎり自然育児で育てたいと思っています。
私にとっての自然育児は、第一に自然なものを体に取り入れること。そして子どもの自然な成長を見守り、大人の価値観や利便性で余計なものを押し付けないように心がけています。
お野菜で例えると、農業や化学肥料をたっぷり使った物は、虫もつかず形もおそろいでまるまると太っています。でもその栄養素も味も薄く、生命エネルギーの波動も弱々しいものです。
一方で、農薬はもちろん、化学肥料はおろか有機肥料さえ使わない自然栽培のお野菜は、味も濃く見た目も個性的で、大地から吸収した地球のパワーに満ちあふれています。
私も娘にはできるかぎり、体を太らせるだけの栄養や、薬、予防接種などを避けて、彼女が自分で育むべき力を自然に身につけてほしいと願っています。
私が日々子育ての参考にしている「野口整体」の考えでは、子どもが経過すべき重要な病気が3つあるとしています。
はしかは肝臓を通して呼吸器を育て、おたふく風邪は生殖器を育て、水疱瘡は股関節を通して腎臓を育てるのだそうです。
これらの病気をきっちり経過し、かかりきることで、子どもは必要な力を身につけ、将来子供を産み育てることのできる体をつくっていくのだとか。
病をスマートに経過させる体作り
娘が今回の水疱瘡を発症すると、それは娘にとってはほぼ初めての自分で乗り越えるべき大きな病気となります。
そんな娘の大きな節目をそばでしっかり見届けられるのかと思うと、母の喜びのような、気合いのようなもので、私の体にわくわくとした武者震いが走るのでした。
発症予定の数日前からは娘の底力をたくわえるべくびわの葉茶と梅肉エキスを飲ませ始めました。
びわの葉には数多くの驚くべき効用があり、庭にびわの木が1本あれば、家族病気知らずと言われるほどです。強壮や新陳代謝を高め、皮膚の炎症を予防する効果もあります。
梅肉エキスは、梅の実の絞り汁を長時間過熱して水分を蒸発させ、ペースト状にしたもので、免疫力を高め、強いデトックス作用があります。
豪華なごちそうや過度の動物性タンパク質は水疱を悪化させると聞き、普段から質素な我が家の食卓は、お正月を迎えても華やかさで乏しいものとなりました(水疱瘡じゃなくてもいつもそうだろ! と夫からつっこまれそうだけど・・・)。
そして発症予定日の二日前、お風呂で娘の背中にぽつんと赤いできものが・・・・。
次の日にはそれがめでたく立派な水疱になったのでした。
そして後編(2013年4月1日)に続きます。
まだまだお正月気分に浮かれる今年の1月5日、娘はめでたく水疱瘡を発症しました。
でもその次の日もまだ赤く小さな発疹が足の付け根やオマタのまわりに少しあるくらいで、かゆみもほとんどないようでした。
このまま軽くすむといいな〜、なんて淡い期待を抱いたまま突入した3日目の朝、娘が発熱し、発疹も背中や脇腹などに広がってきました。少しかゆみも出てきたようです。
ちょうどその日お休みだった夫も、病気になると目がとろんとして二重になる娘を愛おしそうに抱きしめて、「本当に水疱瘡になったかあ」と感慨深げです。
そんな2人に留守番を頼み、私はしばらく家にお籠りできるように食料品を買いにでかけました。
普段のお買い物のほとんどをすませる近所の自然食品屋さんは、添加物や農薬をできるだけ避けることはもちろん、放射能のこと、フェアトレードのことなど地球規模の環境や人々の健康に対する意識がとても高く、安心してお買い物をすることができます。
お店に入ると、店長さんがいつものように声をかけてくれました。
「柚ちゃんどうですか〜?」
「今朝から熱も出て来て、いよいよ始まりました!」
「そうですか〜。さすが柚ちゃんだな。排出の季節に水疱瘡にかかるなんて。病気を経過したあとの柚ちゃんの成長が本当に楽しみです!」
自然育児を実践していきたい私にとって、このお店で店長さんや店員さん、そして時々他のお客様との会話から、自分のしたい子育てのヒントを得られることがよくあるのです。
いろいろ買い物をすませてお店を出ると店長さんが走ってきて、美味しそうな真っ赤なりんごを2個、お買い物バッグに入れてくれました。
地域の人と繋がって、娘の成長を見守ってもらえるのはとても幸せだな・・・、と清々しい気持ちでキーンと冷えた冷たい風の中、ママチャリで帰路を急ぎました。
家に着くと娘がソファーでぐったりと寝ていて、夫が体を拭いています。聞くと娘が突然吐いてしまい、着替えさせたらすぐに眠り込んでしまったとか。
そういえば娘は赤ちゃんの頃から病気になるとすぐに吐いていました。
ほっぺたを赤くしていつもより速い呼吸の娘を見ていると、吐いてしまうのは、食べ物の消化に使う力を、病と戦う力にまわすためなのではないかと思えて来ました。
かゆいかゆいかゆい!
しばらくして目が覚めた娘は、玄米スープ(煎った玄米をおかゆにたいて裏ごししたもの)を入れた豆腐のお味噌汁をお茶碗一杯食べ、またうつらうつらと眠り始めました。
娘の食事は自然食品の第一人者である東城百合子さんの著書を参考に、水疱が出ている間は玄米スープを主食にして、「肉や卵などの動物性食品やお砂糖は控えました。そして薬の代わりに、梅肉エキスをお湯で溶いて蜂蜜で甘みをつけたものを朝晩あげることにしました。
そして、ついにその夜からかゆいかゆい地獄が始まりました。
娘は寝ている時も起きている時も数時間おき、ひどい時は数十分おきに「かゆい!かゆい!」と泣き声を上げます。
私は急いで常に傍らにおいてあるビワの葉エキスをコットンに浸し、痒いところにつけます。オマタ付近や水疱がわれたところにはビワの葉エキスがしみるようなので、カレンデユラクリームをつけました。
お肌の万能ハーブであるカレンデユラで作られたクリームも、赤ちゃんの時のおむつかぶれや冬の乾燥、転んだときの擦り傷の手当など、娘が生まれた時からずっと手放せないアイテムです。
昼夜を問わず痒がり、ぐずぐずと甘える娘。それがまるで懐かしいおっぱい時代の頃のようで、私は辟易するより妙に喜々とした気持ちで娘に接することができました。
幼稚園に入ってからの娘は、お友達と遊ぶことが何よりも楽しみになって、かつてあんなに喜んでいたママとの2人た旅に誘っても、近頃は「うーん・・・」と微妙な顔で首をかしげられてしまいます。
ママ離れして行く娘を寂しく見つめるしかないママの気持ちも、娘の水疱瘡は癒してくれました。
永遠に続くかのように思われたひどい痒みも2晩が過ぎた朝には治まり、少し食事をしてはうつらうつらと寝ていた娘にもいつのまにか元気が戻ってきました。
一番慌てたのは水疱が一粒、ものもらいのように目の際にできてしまい、それが潰れて結膜炎になってしまった時。娘の目が大きく腫れて、試合後のボクサーのようになってしまいました。
ビワの葉エキスは目の炎症にも効きますが子供にはしみるので、応急処置として抗菌効果の高い番茶に塩を入れて煮出し、その蒸気を目にあて、冷めたらそのお茶をコットンに浸してしばらく目にあてておきました。
それで少しひどい痒みはおさまったようなので、次の日眼科を受診して、軟膏と目薬をいただき数日後に腫れはおさまりました。
結局連休もはさんでじっくり体を休ませ、病院で幼稚園の登園許可をいただき、普段の生活に戻ったのは1月16日から。
みっちり10日間、娘の力を信じ、常にそばにいた日々は穏やかで、とても幸せでした。
娘にとっても病気というのは、パパやママやお医者様にお手伝いをしてもらうけれど、最後は自分の持つ力で治していくのだ、ということが実感できたようです。
手首に残った水疱瘡の痕がすっかり消えてなくなるまで、誰に合ってもしつこくそれを見せびらかし、「柚ね。水疱瘡だったんだよ! でも治ったよ!」と、とっても誇らしげに自慢していました。
長い冬休みが終わり、バタバタと忙しい日常に戻ってストレスや疲れを感じる時もありますが、なぜか自分が以前ほどイライラしなくなったように感じます。
水疱瘡くんは、娘だけでなく、ママも成長させてくれたのかな?
ありがとう! 水疱瘡君♪
若い女性向けに影響を持つ出版社のサイトですから、このような文を掲載することは感染症に対する認識がないことに社会的な責任を問われる必要があるのではないかと思います。
ただ、「母になる」というタグがついたこうした記事を読むと、これまで「自然なお産」「自然育児」に広がるある思想や代替療法、あるいは母乳育児推進といったあたりで感じ続けていたことが、「ああ、やっぱり」とわかる文章でした。
そう、子供よりも「自分が大事」なのが「母になる」というファッションなのだと。
そして姿を変えて、何度も何度も繰り返していくのだろうと。
「思い込みと妄想」まとめはこちら。