思い込みと妄想 32 <「どこを切っても金太郎」からあっちの世界が広がる>

午前中から30度近い暑さにも負けずに、プールには元気なおばあちゃんたちが集まります。


更衣室でもプールでも、おしゃべりににぎやかなこと。
年齢とともに声も大きくなるので、聞いてるつもりはなくてもその会話が耳に入ってしまいます。


Facebookとかインターネットに書いてあったけれど、ペットボトルの飲み物はよくないそうよ」「なんでも、腐らないように入っているものが、本当は体によくないらしいの」
「へーー。やっぱり、体にわるいのよね。ペットボトルは」
「そうよ。だから、今日は麦茶を持って来たの」


あ〜〜どこかで聞いた話と思いながら、目の前でペットボトルのお茶を飲んだのでした。
ちょっとわざとらしかったかな。


<「どこを切っても金太郎」とMovemennt>


1990年代の「自然なお産」の流れで使われていた「GHQ」が、2000年代には「母乳育児」の流れで見かけるようになりました。


そんなどこを切っても金太郎を、いくつか取り上げてみようと思います。


まず、助産師のブログからです。

母乳栄養率の変化
ちょうど、自宅他の出産と病院・診療所などの出産との割合が交差する1960年代では、完全母乳栄養児は1ヶ月の時点で7割程度でしたが、自宅他と病院・診療所出産の割合が完全に入れ替わった1980年代では、生後1ヶ月時の母乳栄養の割合は、47%まで落ち込みました。(自然育児手帳より)

現在もそのくらいの栄養率を維持していますが、出産場所が急に施設内へ移っていったのには、理由があります。敗戦した日本にGHQが入り、その指導のもと、保健師助産師、看護師法ができて、日本産婆会の解散が迫られ、アメリカ式の医療の導入、現役産婆の高齢化による後退、新たな助産婦の施設への就業等があり、ほんの10年ほどで急速にお産の場所は自宅出産から、施設出産へ移り変わっていったのでした。


ずいぶんご高齢の助産師かなと思ったのですが、写真をみると50代前後のようです。
おそらく完全母乳という言葉の歴史を考えたことがないのだろうと思います。


もうひとつは、2008年に出版された「病院出産が子どもをおかしくする」(奥村紀一著、洋泉社)の内容を紹介したブログです。

 戦後の日本は最良の伝統的な育児法を最悪の西洋方式に切り替えましたが、それが母親の異変を引き起こし、虐待を横行させる事態を招いたのです。


 さて、移行の各論中で「!」という箇所を抜粋します。
★出産方式の大転換(「自然」から「人工」へ)が起きたのは、1948年にGHQ連合軍総司令部)の指令に基づいて、厚生省が「母子衛生要綱」という通達を出し、その中で出産の場を自宅から病院に切り替えるように勧告したからです。
 アメリカでは1930年代から出産を病院で管理する方式が主流となっていました。


★すべての哺乳類は、出産直後から子が独り立ちするまでずっと親子が一緒に生活し、授乳期間中に分離されるようなことはありません。

(赤字の箇所が、著書からの引用部分)

「自然なお産」から「母乳育児」へと開業助産師の中での微妙な変化や、「自然なお産」の流れの変化がわかる文章といえるかもしれません。


<「どこを切っても金太郎」からあちらの世界へ>


さて、もう少し違う世界へと入り始めたことを感じさせる別の助産師の文章です。
ご自身が現在、育児真っ最中のようなので30代前後の方でしょうか。

ミルクの方、ミルクでも、愛情形成はできます。自信をもって、にこにこして、ありがとうと言いながらミルクをあげてください。携帯さわりながらミルクをあげるよりもはるかにましです。
でも、できたら、ぜひ母乳!!
他にもさまざまなメリットあります。


戦後、日本人をだめにする制度が、GHQによりしかれました。
母乳率100%の日本人に、病院出産をすすめ、完全ミルクにしてしまいました。


なんと、母子手帳は、ミルク会社(もちろんアメリカの指導で)が作ったのです。
未だに、ミルク会社との癒着がある病院はいっぱいあります。


アメリカの牛乳を売る事が1つも目的。
それともう1つ、牛乳を飲ませることで、日本人をおかしくしたり病気にしたりする目的が1つ。


給食に牛乳が導入されたのも同じ理由です。


牛乳はよくないです。あれは牛の飲み物です。哺乳類で、他の動物のおっぱいを飲むのは人間だけです。
(中略)
母乳育児に悩んでおられる方、また、お産の相談にのります。


あ〜〜〜。
GHQが日本の産婆制度をなくした」⇒「GHQが日本の母乳育児をダメにした」⇒「GHQが日本の育児をダメにした」⇒「GHQは日本人を劣化させようとした」。



<このあたりかな?>


30代前後の助産師が、自信をもって善意と正義感に突き進んでしまったきっかけは、「母乳育児は地球を救う!!」に書いてあったあたりでしょうか。

今なぜ人間が人間のお乳で育てることが、これほど困難になってきたのでしょうか?


犬は犬の、猫は猫の、ゴリラはゴリラの、パンダはパンダの親のお乳で育てるのが哺乳動物として当たり前なのです。
人間もこの地球上に生まれて以来、何十万年もの間、哺乳動物として、赤ちゃんが生まれたらすぐに母親の母乳を飲ませて育てることが当たり前であったのが、たったこの数十年の間に、牛の乳(血)を主体にした化学薬品漬けの人工ミルクで育てて当たり前という時代になってしまいました。
(中略)
日本でも約60数年前、アメリカに戦争で負けるまでは99%が助産師の介助のもと、家庭で出産して、99%母乳育児をしていました。しかし、アメリカが入ってきてから、GHQの指導のもと、病院で出産するようになったのです。


人工乳に対する忌避感には、「戦争で負けた」という感情の持って行き場のなさが未だに続いている人もいることもあるのかもしれませんね。


<ここまで行ってしまう「あっちの世界」>


私と同じ看護教育、助産師教育を受けた人が、「アメリカが日本人を病気にさせることが目的」とまで信じ込むのは、何か感情を揺さぶり、正義感に燃えさせるようなきっかけがあったのでしょう。


まあ、すぐにピンときました。
GHQの日本人劣化計画」「牛乳飲むな」「母子手帳を捨てろ」あたりで検索すれば、すぐにその世界が広がることでしょう。
あの方とかあの方♪とか。


そういう世界があることを知ったのはdoramaoさんのとらねこ日誌でした。
というわけで、関連エントリーはこちら。

「モーいちど骨粗鬆症と牛乳」
「白砂糖」
「牛乳は血液?」

「どこを切っても金太郎」から怖い世界が広がりますよね。




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