母子同室という言葉を問い直す 2 <預けたら負け>

時々、看護職の出産があります。
看護師、保健師、そして助産師です。


まあ、分母が少ない話なので、本当のところはどうなのかは断定もできない話ですが、助産師が出産した場合、ほぼ100%出産直後からの母子同室を選択するのがここ数年のトレンドのような印象があります。


新生児やお母さんに仕事上関わっているので、産科経験のない他の看護職に比べれば出産直後からの同室のハードルは低いのだろうと思います。


ところが、自分で世話をしてみて初めて、「新生児はこんなにぐずるのか」「こんなに眠らないのか」「こんなに吸わないのか」ということを実感するのでしょう。
ずっと抱っこと吸わない児の「授乳」との格闘をしています。


最初の2〜3日の激しい啼泣の続く時間帯には、代わってあやしてあげようと訪室するのですが、一人でなんとか頑張ろうとするようです。
「少しミルクを足して休んだら」なんて、とても言わせない雰囲気が漂っているので、すごすごと退散してきます。


あと1〜2時間もすれば、赤ちゃんも一旦深い眠りに入るでしょうから、お母さんが頑張るというのなら手を出さないで見守るしかないのかなと、ちょっとやきもきします。


助産師だからできて当然」「お母さんたちに頻回授乳と完全母乳の説明をしてきたのだから、自分ができないなんてありえない」
そんな心境で自分を追い詰めているのではないかと心配になるほど、表情が厳しくなることがあります。


「人類始まって以来、出産直後からお母さんだけが赤ちゃんの世話をするなんて過酷なことは今まできっとなかったと思うよ」と、肩の荷を降ろせるようにそっと話すのですが、耳には入らないようです。


それに比べて、産科とは無縁だった看護師さんたちの場合は、「預かりますよ」「無理しないでね」というとホッとしたように「お願いしま〜す!」と預けてくれます。
「早ければ、初産婦さんの場合は3日目頃からちゃんと母乳が出るようになるから心配しないでね。今、少しミルクを足してもいい?」と尋ねると、「全然、大丈夫です」とあっさり受け止めてくれます。



助産師の場合、自分たちが勧めてきた「出産直後からの母子同室」「完全母乳」そのものが実験的であることになかなか気づかないようです。
なので、自分の出産では「それが可能である」ことを実証しようと追い込んで行く。
預けたら負け、ミルクを足したら負けといった気持ちがさらに強くなるのかもしれません。


「母子同室」って何でしょうか?




「母子同室という言葉を問い直す」まとめはこちら