カンガルーケアを考える16  <つじつまが合わない話>

以前は「カンガルーケア」とか「母子早期接触」というと、お母さんの胸の上に生まれたばかりの新生児を裸のまま「うつ伏せ」にして密着させるイメージでした。


ところが最近、とある助産院のホームページで、出産直後のお母さんの胸の上に赤ちゃんを上向きに寝かせている写真が公開されているのを見ました。
「うつ伏せだと危険」だから、反対向きにしたのでしょうか。
いやはや、いろいろなことを思いつくものだなあと驚きました。


でもきっと、お母さんの胸に仰向けに抱っこさせているのは、「腹這い(うつ伏せ)にさせることの危険性をなんとなく感じているからではないかと思います。
新生児や乳児をうつぶせ寝にさせることの危険性は、すでに1990年代には警告されていましたから。


まあ、胸の上に「仰向け」に新生児を抱っこしたら、新生児は「自ら乳首を探し当てて吸い始める」という母乳推進には欠かせない行動が制限されるのですが、それでも「出生直後の児を裸のまま抱っこする」ことに意味を持たせたいのかもしれませんね。


その「新生児や乳児をうつ伏せにさせると危険」というリスクマネージメントとして当然のことが、出生直後の新生児対しては適用されないのは何故だろうと、ずっと不思議に思っています。


「出生直後の新生児は、母親の胸の上であればうつぶせ寝にしても安全である」と勧めることができるような検証がされたのでしょうか?
常識で考えれば、出生直後の新生児であればもっと危険と感じるのではないかと思います。


ところがその危険性を感じさせなくする魔法のような言葉が、<お母さんが動けるようになってからではダメですか?>の記事で紹介したニュースに書かれている、「早期母子接触は母子の心身安定につながるといった利点」です。


新生児をうつ伏せにすることは、これまであった突然死の事例を思い出すほど危険に感じることであり、病棟では「やってはいけないこと」なのに、なぜ「出生直後」なら「お母さんの胸の上なら」大丈夫だと思えるのでしょうか?
そしてさらに、その方が何かに効果があるとまで言い切れるのは何故なのでしょうか?


産科医療補償制度報告書の「生後5分まで新生児蘇生処置が不要であった事例について」の中にはこう書かれています。

「『早期母子接触』実施の留意点」では、早期母子接触は科学的にその有効性が証明されているのみならず、一定の条件の下に安全に実施すれば決して危険ではないとされている。

「3. 分析対象事例の概況」より


なんだか辻褄の合わない話ですね。



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