簡単なことを難しくしているのではないか 8 <お母さんが動けるようになってからではダメですか?>

「早期接触で脳性まひ7件 出産後すぐの赤ちゃん」というニュースがありました。


 出産事故で赤ちゃんが抱っこする「早期母子接触」中に赤ちゃんが急変し、結果的に脳性まひになった事例が7件あったことが28日、分かった。制度を運営する日本医療機能評価機構(東京)が報告書を公表した。
 
 早期母子接触は母子の心身安定につながるといった利点も指摘されているが、機構は「医療関係者が継続的に観察し、赤ちゃんに心電図モニターを装着するなど慎重な対応が必要」と注意を呼びかけている。


 機構によると、生後25分の赤ちゃんに帽子をかぶせブランケットを掛けた状態で母親が抱っこしていたが、30分後に赤ちゃんの心肺停止が確認され、低酸素性虚血脳症を発症して脳性まひになった事例などがあった。機構はこの事例の原因について「特定できないが、誤嚥(ごえん)で気道がふさがれたり、呼吸中枢が未熟だったりしたことも考えられる」と説明した。


 一方、機構は、昨年度発行の報告書で、脳性まひ事例の陣痛促進剤の用法・用量をめぐる表に記載があったと説明。日本産婦人科学会の指針逸脱を示す「基準より多い」の割合が本来は6割超だったのに、誤って3割前後としていた。「基準内」の項目とデータを取り違えたという。
(2016年3月29日(火)配信 共同通信社


最後の一文は見出しとつながっていないことと、内容についてはよくわからないのでこれから送られてくるであろう産科医療補償制度の報告書をよく読んでみようと思います。



さて、産科医療補償制度 こちらに少し書いたように2009年から始まった制度です。
冒頭のニュースの「分析を終えた793件」というのは、この2009年以降の事例だと思われます。


その中で、「出産直後に母親が抱っこする『早期母子接触』中に赤ちゃんが急変し、結果的に脳性まひになった事例が7件あった」ということです。
記憶にある限りでは、産科医療補償制度の報告書で、初めて「早期母子接触」に関連する脳性まひが報告されたのではないかと思います。


これは大きな一歩だと思います。
ただ、その結果が脳性まひではなく亡くなった赤ちゃんや、人工呼吸器を装着したままの赤ちゃんについてなど、全体像を示した数字ではないわけですが。


経膣分娩でも少なくとも出産後2時間ぐらいはお母さん自身が思うように身動きできない時期ですが、「カンガルーケア裁判について」にくださったこんさんのコメントを読んで、帝王切開術の当日から翌朝までという術後の最も危機的な時間帯にも、授乳や抱っこがお母さんに任されたまま行われていることを知りました。


そのこんさんからコメントをいただいた記事に「カンガルーケア」や「早期母子接触」について書いた記事のまとめがありますが、「早期母子接触」、それが何を意味しているのか未だによく理解できません。
通常の抱っこから、裸でうつぶせにさせる方法までその言葉が指しているものはとてもあいまいです。


いずれにしても、お母さんがもう少し自分で動けるようになってからではだめですか?


そして分娩や帝王切開手術直後に「我が子を抱っこしてみたい」という思いを大事にする時には、かならずスタッフが必ず側を離れずに介助すること。
それがこの世に生まれて来た新生児を守る、私たちの基本的な仕事だと思うのですが。


いまだに、初めて赤ちゃんを抱っこするようなお母さんあるいはお父さんに出生直後の赤ちゃんを抱っこさせたまま、目を離すスタッフが多いこと。


それは「家族だけにしてあげたい」という思いなのか、それとも他に片付けなければいけない業務があって側を離れてしまうのか。



さらに、「部屋を暗くした方がよい」という考えを持ったスタッフが最近増えて、薄暗くしたままお母さんに赤ちゃんを抱っこさせてその場を離れているのです。
パルスオキシメーターがついているから大丈夫と思うのでしょうか。


「早期母子接触」という言葉と新たな儀式が作られたことで、出産直後のお母さんと赤ちゃんから目を離さないという基本的な安全管理の意味がよくわからなくなってしまったように感じています。


これも「簡単なことを難しくしてしまった」ことのひとつのように思います。




「簡単なことを難しくしているのではないか」まとめはこちら