水菜

最近では、1年中手軽に買える野菜として水菜があります。
鮮やかな緑と茎の白さがきれいですし、洗ったらそのままザクザクと切るだけで簡単でいいですね。
ただ、売っている姿はボリュームがあっても、加熱するとシュンと量が減ってしまうところがちょっと損した気分になってしまうのですが。



この水菜も、なくてはならないぐらい存在感のある野菜のひとつになったのですが、私が子どものころには無かった野菜です。
正確に言えば、私が住んでいた山間部では、「水菜」という野菜はまったく違った姿で、違った調理方法で使われていました。


いつ頃か、ほっそりとしたこの「水菜」が出回るようになって、同じ日本で同じ名前なのにいろいろなものがあるのだという驚いた気持ちが、この水菜を見るたびに心のどこかに浮かんできます。


90年代ぐらいには、飲みにいくとサラダの彩りに使われて始めていたような記憶があるので、このあたりの時期でしょうか。



「野菜ナビ」の水菜の歴史には、「平成になって全国に普及し消費が拡大しました」とあります。
もう少し検索していたら、「NIKKEI STYLE」の「京野菜の水菜、いつから全国区 今や茨城が出荷1位」(2013年9月23日)という記事がありました。

 夏休みで訪れた沖縄で食事をしたところ、京都のおばんさいでおなじみの水菜が料理に添えられていた。「京野菜なのに沖縄でも食べられるの?」。そういえば最近は季節を問わずにスーパーに並んでいる。調べてみると、水菜はこの10年ほどで急速に広まり、今や「全国区」の野菜になっていた。

京都特産、10年で様変わり


 まず関西の台所、大阪の中央卸売り市場に向かった。ここに集まる水菜は年約1700トン。はりはり鍋向けなど以前は冬場の扱いがほとんどだったが、季節を問わなくなり「取扱量は年々増えています」(大果大阪青果の山本泰基さん)。


 箱詰めされた段ボールの産地を見ると、福岡県や茨城県、北海道など関西以外ばかりだ。「まとまった量が必要なスーパー向けは福岡や茨城産が主流。京都など近畿産はほとんどない」そうだ。


 農林水産省の統計では2011年の水菜の出荷量1位は茨城県で1万4100トン。2位に福岡県、3位に埼玉県が続き、京都府は2380トンで4位だった。

 主要産地の自治体に聞くと、茨城、福岡、埼玉の3県で水菜の本格生産が始まったおは00年前後、京都府は00年時点で1300トンを生産し、この時点では全国トップとみられる。大規模農家が生産した茨城などがその後京都を抜いたようだ。


京都の改良がきっかけ  2〜3週間で収穫


 そもそも全国普及のきっかけをつくったのは京都府だ。販路拡大を目指して1989年に「京のブランド産品」の認証精度を始め、水菜や賀茂なす万願寺とうがらしなどを選んだ。「このとき、消費者の口にあうように水菜を改良した」。京都府農林水産技術センター農林センター(亀岡市)の園芸部長、末留昇さんが教えてくれた。


 京都や大阪などで昔から食べられていた水菜は1株3〜4キログラムほど。一抱えほどある白菜くらいの大きさだ。葉は固く、主に鍋や漬物に使われていた。


 これに比べて改良型の水菜は1株が20〜50グラム程度と小さめ。歯が柔らかく、生のままサラダとして食べられる。従来は2〜3ヶ月をかけて大きく育てていたものを、2〜3週間で収穫できるようにしたという。「手軽に食べられるようになったおかげで、普及に弾みがついた」と末留さん。


 ブームは意外にも関東で起きる。00年ごろ、大手青果卸の東京青果(東京・太田)が地方野菜のひとつとして水菜を取り上げたところ、首都圏のスーパーで売れ行きが伸びた。「それで大量生産できる関東の生産者に水菜の栽培を呼びかけた」。東京青果の宮本修専務はこう明かす。


私は90年代には水菜をサラダで食べていたような記憶があったのですが、もしかすると2000年に近い頃だったのでしょうか。
いずれにしても、ごくごく最近になってあっという間になじみの顔になった野菜ですね。
その影には、品種改良や生産地の拡大、流通の変化といった大きなうねりが短期間であったと思うと、ちょっと気が遠くなりそうですね。


さて、私が子どものころに住んでいた地域では、「水菜」は春先だけ食べることができる貴重な野菜でした。
水田の裏作として寒い冬の時期に時間をかけて育てられ、たしか2月の終わりころから収穫されて漬物になりました。
春先に、長くても1ヶ月ほどしか食べることができない水菜の塩漬けは、春を感じる貴重な野菜でした。


冷凍庫が家庭に普及した1970年代に、水菜の漬物を冷凍すればもう少し長い期間、食べることができるようになりましたが、それでも早春の一時期だけの幻のような漬物でした。



Wikipediaミズナの「名称」に、「人糞尿などを使用せず、流水(清流)を畦間に引き入れて栽培するため「水菜」の名がある」と書かれています。
その風景を子どもの頃にはよく見ていたのですが、そういう意味があったのかと初めて知りました。





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