境界線のあれこれ 79 <都県境>

日頃はほとんど意識していない都県境ですが、多摩川を渡って都内に入る時にはなぜか「無事に戻って来た」とほっとします。
もし、神奈川など西の方向に出かけている時に大きな災害があっても、とりあえず多摩川を越えられれば自宅へたどり着けると無意識のうちに思っているのでしょうか。


最近、地図で川の上が都県境になっている箇所を眺めるようになって、気づいたことがあります。
都県境になっていない川の部分に対して、都県境になっているところは橋が少ないのではないかということです。


先日歩いた旧江戸川は、今井橋以外、江戸川水門までひとつも橋がありません。


その本流である江戸川も荒川に比べると、橋の間隔がかなり開いています。
荒川や多摩川も、都内であれば橋の間隔が短いのですが、都県境の部分になると間があいている印象があります。


案外、都県境に暮らすというのは、隣り合った自治体へ行き来する不便さがあるのかもしれませんね。けっこう迂回しなければ橋がない地域もありそうです。


検索していたら、やはり問題にはなっているようで、2013年6月20日市川市議会の会議録に、当時の道路交通部長の発言が以下のように記録されていました。

 私からは大洲橋建設に関するご質問についてお答えします。
 初めに、現在の江戸川の架橋状況についてご説明します。市川市江戸川区との間の架橋につきましては、主要地方道東京市川線の今井橋と国道14号線の市川橋の2橋のみでありまして、その間隔は8キロメートルとなっており、他の区間と比較いたしまして、かなり広い間隔となっております。このことが交通のアクセス、災害時に避難路等の観点に加え、水害の観点からも課題としているところでございます。

橋ひとつ建設するのにも、都、県、区、市の間で調整しなければならないので、大変そうです。



ちなみに現在、都県境の橋はどれくらいあるのだろうと検索してみたのですが、よくわかりませんでした。
ただ、関心をもって調べた方がいらっしゃって、「都県境の橋」という2001年の記事に、98のうち34カ所を歩いたことが書かれていました。2003年の時点では101カ所になったようです。



<境界が未確定の場所もあるらしい>



日本では、きっちりと土地の測量がなされ登記されているものだと思っていました。
ところが、都県境で検索していたら面白い記事がありました。


「NIKKEI STYLE」の「東京ふしぎ探検隊 東京にも領土問題 千葉・埼玉との境界が未確定」(2013年9月6日)という記事には、先日歩いた旧江戸川のことが書かれていました。


葛西臨海公園TDLとの間を流れる旧江戸川の河口には、境界線がない。どこまでが東京都でどこからが千葉県なのかが決まっていない」
「旧江戸川が流れ込む先にある東京湾上の境界線も、決まっていない」
また、旧江戸川の江戸川水門付近では、「江戸川の真ん中を走って来た境界線は、分岐する少し手前で消えている」そうです。
そして、あの水元公園も、「この小合溜のどこに境界線を引くか。葛飾区と三郷市の見解が折り合わない」と書かれています。


ハンガリーの真ん中を流れるドナウ川について、「ブダペストには多くの橋が架けられているが、それを除くとハンガリー国内にドナウ川を越える橋はほとんどない」にへえーっと驚いたのですが、都県境も似たような状況があるとは灯台下暗しですね。



と、この記事を数日前に考えていたら、東京湾の埋め立て地の所有権を大田区江東区でもめているというニュースが。
境界線を引くというのは大変なことだと思いました。





「境界線のあれこれ」まとめはこちら