観察する 51 <梅の葉>

散歩をしていると、の木々には鮮やかな緑の葉が茂り、その中にがいつの間にか大きくなっています。
なんて美しい緑色なのでしょうか。
あの梅の実の緑色を表現するのは、何色と言ったら良いのでしょうか。


梅の花が好きなので毎年まだかまだかとあちこちの梅を気にしていたので、年によって開花の時期も色々であることも見えてきました。


何年か前、ふと「梅は花が先に咲いて、後から葉っぱが出る」ということに気づきました。
いえ、梅が好きになる前からその順番は知っていました。桜もそうですしね。
でも、当たり前と思って見ていた事象にどんな意味があるのか、初めて気になりだしたというあたりでしょうか。


今年はさらに、「花の後、どれくらいで葉が出てくるのか」ということがとても気になりました。


そこで毎日のように見ている梅を観察してみました。といっても、記録をつけるわけでもなくいい加減なものですが。
3月の終わりに全ての花が散りました。
すぐに、2〜3日とか数日ぐらいで葉が出るだろうという予想をしていたのですが、1週間を過ぎても枝にはほとんど変化がありません。
周囲にある紫陽花の葉がどんどんと大きくなっていくのに、梅は葉が出る気配すらないのです。
ようやく2週間ぐらい過ぎて、葉が出始めました。そこからは数日もしないうちに、一気に新緑に包まれました。


梅の花が終わった後、こんなに長い沈黙の時間があったことに気づかなかったのでした。
まあ、近所の1本の梅という「個人的体験談」のレベルなのですが。


どうして花が終わった後しばらく葉が出てこないのか気になって検索してみたところ、答えは「わからない」ことがわかりました。


「日本植物生理学会」の「植物Q&A」の答えに以下のように書かれていました。

ところで、植物の生植(増殖)の過程では、花が開くのが春であるか秋であるかには関係なく、先ず葉が茂ることで光合成が営まれてエネルギー(栄養分)が備蓄し、それを受けて(日長条件や成長の程度などに関連して)花芽が形成され、花芽が成長して開花・受粉(受精)の過程を経て果実がつくられ、果実が成熟して母体を離れて新しい個体に育つというシナリオで事態は動いています。この過程には全体として大量のエネルギーが必要で、生植の過程と光合成によるエネルギー獲得が同時進行するのが好都合のようにも考えることはできます。しかし、自然界では他の要因も関係するので、例えばヒガンバナに見られるように栄養成長と生植成長の段階が明瞭に区別されている場合もあります。生育場所での季節や成長のどのタイミングで開花させるかについての植物の戦略があり、栄養成長とは相いれない原理がそこには働いているようです。生植成長にエネルギーが必要なことは言うまでもありませんが、ヒガンバナの場合には鱗茎に蓄えられている光合成物質が、一般には幹や根に置ける蓄えが最初のエネルギーの供給源となるようです。多量のエネルギーを必要とする果実成長の段階においては多くの場合光合成と同時進行、成熟の最終段階では時として植物体の消耗を伴って成熟の過程が進展します。

以上、補足説明が長くなりましたが、”染井吉野”などで花が咲くのが葉の展開に先行する理由としては、開花と開葉の展開は実際にはほぼ同時に進行する現象ではあるが、花芽が休眠中に大きく成長しているため、見かけ上では花の展開が芽生えの展開に先行するように現れるか、あるいは、仕組みとして開花と開葉は別々に制御されており、場合によっては開花の結果ももたらされるシグナルが芽生えのスタートに関連しているとも考えられます。何れの仕組みによるにしても、結果として生ずる開花と開葉の時間差は植物にとっては重大で、受粉の過程が影響する可能性が高いと思われます。受粉の効率化の視点(風媒性や虫媒性にも関連、関係する植物の行動)から解析がなされているようですが、結論はまだ定まらないように私には見受けられます。どのような問題に、どのような実験をすれば確証が得られるかについて考えてみられることをお勧めします。


「どうして花が先に咲いて、葉が後からか」
この疑問をより専門的な表現にすると、このQ&Aの「桜や梅の樹は、なぜ先に生殖器官である花が咲き、後から栄養器官である葉が生えるのか」になるようです。



来年も梅をじっくりと見てみようと思います。




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