観察する 53 <複数の相手を同時に観察する>

40年ほど前、看護という仕事の入り口に立った時には、一人の対象(相手)の言動を観察し、プロセスレコードを頭の中に思い描いて対応するだけでも一杯一杯でした。


思えば遠くに来たものです。
役に立つのかと疑問に感じていたプロセスレコードが、積み重なると状況の変化にも応用できるようになるのかもしれません。
今、私自身の仕事中の言動をプロセスレコードにしてみると、「相手」は妊産婦さんだけでなく、新生児を相手にしたプロセスレコードも同時に展開しています。
「授乳のことで頭がいっぱいになっている」お母さんたちやスタッフの言動を観察しつつ、新生児の表現を言語化し、新生児の通訳になるにはどうしたらよいかと常に新生児の様子を無意識のうちにプロセスレコード化しています。



「相手」には、ご家族の様子もあります。
妊産婦さんの夫や家族の言動もまた、妊娠・出産の際にある程度パターン化できます。
置かれた状況や表情から、「言ってしまいそうなこと、やってしまいそうなこと」がなんとなくわかるので、あらかじめうまく見通しを伝えることで、家族も感情の向き方を変えられることもあります。


「相手」には一緒に働く医師や看護スタッフも含まれます。あるいは、助手さんや事務、食事や掃除のスタッフなど、一人一人の言動を観察しています。
それぞれの判断や好む方法のパターンがありますから、できるだけそれぞれの動きを尊重しながら丸く収めるとでもいうのでしょうか。


そして「相手」からも観察されている自分を、意識的に観察しています。
案外、これが一番難しいものかもしれません。
自分の言動が相手から理解されなかったと感じる時には、相手への感情を鎮めることから始めなければならないのですから。


うまくいくこともあれば、また初めて遭遇する状況のこともあります。
その多くが「正解もないけれど間違いもない」「答えは明確ではない」という状況なのかもしれませんが、その時々の自分の言動をまた振り返って次回に活かせるような反省をする。


その基礎になっているのが、学生時代に学んだプロセスレコードだったのかもしれないと、最近考えています。




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