発達する  22 <過去・現在・未来>

「近代測量の幕開け」を観に行くのに、行きはつくばエキスプレスでしたが、帰りは途中で寄ってみたいところがあったので別の路線に乗り換えました。
座席は空いていたのですが、座席に座っていると限られた方向の風景しかみえません。
車窓から見える地形を全方向からみてみたい。
列車の最後尾のところが空いていたので、そこで立って風景を見ることにしました。


そこには先客がいました。小学校低学年の男の子です。
私が近づくと、「ここから見たいの?」と尋ねてきました。
先客に礼を尽くし、「一緒に見せてもらってもいいですか?」と尋ねると、「いいよ」との返事。
そして「ここから見ると、線路がまっすぐでしょ?」「もう少しすると曲がり始めるんだよ」と色々と説明してくれました。
「鉄ちゃん」の仲間だと思われたのかな?


しばらくすると私の方をまっすぐに見て、質問が飛んできました。
「将来、何になりたいの?」と。
「え〜?私には将来というほどの将来もないし・・・」と、突然の質問にどぎまぎしていると、さらに少年は質問を重ねてきます。
「小学校1年生の時に、聞かれたでしょ?将来何になりたいかって」。


ああ、そうだ、小学生の頃は「看護婦さんになりたい」とか言っていたとは思うけれど、本当は「何をしたいか」がなかったのだ、でも今だったら、こんなことをしてみたいということがいくつもあったのだと思い出して、「船に乗ってみたい」と答えました。
ふう、ブログで頭の整理をしていて良かった。
子どもって大人をまっすぐ見て、射抜くような問いかけをしますね。仕事とは何かなんて考えていたはずなのに、しどろもどろになりました。


私の「海が好きだから」という答えに対して、少年はちょっとシュンとして、「潜れるの?」と聞いてきました。もしかしたら泳ぐのが苦手なのかもしれません。
ちょっと立場が逆転して、私は急に大人の顔になって「潜れるし、泳げるよ。最初はできなかったけれど、ずっと続けたから」と教訓めいたことを言い返したのでした。



少年が降りたあと、会話の中のあることが気になり始めました。
おそらく小学校2年生ぐらいだと思うのですが、「何になりたいの(未来形)」と「聞かれたでしょ(過去形)」と、過去形と未来形を使い分けていました。
子どもというのは、過去と現在と未来の時間のつながりを、いつ頃からどのように理解し始めるのだろう、と。


そして、私が日々接している新生児が、数年後にはこの時間の複雑な感覚を習得していくのかと不思議な気持ちになったのでした。




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