助産師と自然療法そして「お手当て」 40 <新生児や赤ちゃんへの整体>

出生直後の新生児を逆さづりにする助産師の話を直接聞いてショックを受けたのは数年前のことでした。


知人の孫が自宅分娩で生まれた時のこと、分娩介助した助産師が生まれた直後の新生児の足を持って逆さづりにしたというのです。


「胎内で歪んだ体を、左右まっすぐにするために最低でも15秒ぐらい
逆さにするとよい」というような説明をしたそうです。


「自然なお産」を謳う出産の不自然さは、ここまで危険なことも見えなくさせるものかと愕然とする話でした。



<新生児を逆さづりにしていた蘇生法>


出生直後の新生児を逆さづりにすることは、古い古い新生児蘇生法として実施している医師や助産師が最近までいたことはこちらの記事に書きました。


現在は、以下のようになっています。

温められた別のタオルを用いて児の背部、体幹あるいは四肢を優しくこする
これで自発呼吸が開始されなければ、児の足底を平手で2,3回叩いたり指先で弾いたりする。背部を優しくこすってもよい。
そして再度気道確保の体位をとる。
(「新生児蘇生法テキスト 改訂第2版」より)

私が助産師になった1980年代終わり頃のテキストでは、以下のようになっています。

足の裏を叩く、脊柱をこすりあげる。
(「最新産科学ー異常編ー」の「新生児の蘇生法」より)

いずれにしても、出生直後の新生児を逆さづりにするようなことは学んでいませんでした。


根拠を明確にした文献はみつからないのですが、出生直後の新生児を逆さづりにすることで頭蓋内出血の可能性、内臓が肺を圧迫して肺胞が広がりにくくなる可能性あるいは股関節脱臼の可能性などが推測できます。


蘇生法としても行われなくなった「新生児を逆さづりにする」ことは、一体どこからきたのでしょうか?


<新生児の頚椎のずれ>


新生児を逆さづりにする「施術」自体は見つからないのですが、カイロプラクティックを標榜しているHPに時々みられるのが、新生児の頚椎のずれという内容です。


日々、新生児に接している私たちが学んだこともない知識であり、みたこともない異常ですが。


いくつかのHPから拾ってみます。

背骨の中で最も重要な対骨はアトラス(頚椎1番)です。脊椎全体を通してこのアトラスがサブラクセーション(骨のズレ)を起こすと、神経学上の圧迫、干渉の第一の原因となります。


人間が一生をつうじて最初に上部頚椎のズレの危機にさらされる可能性は出産をあげることが出来ます。

アメリカのステファン・ダフドクターは最初のサブラクセーション(骨のずれ)は、ほとんど出産時母親から赤ちゃんを取り出すとき吸引、カンシを使うことによっておこる。アメリカ国民の90%が不自然な環境の中で生まれる時に起こっていると指摘しています。

上記は分娩時に胎児に頚椎のズレか起きるという主張ですが、それ以外に、新生児が一定の方向を向くことによってずれるというものもあります。

乳幼児の正常な心身の発育に最も重要なことは、愛情、栄養とともに、頭頚部と骨盤・股関節を正常に保つことです。


極端に決まった方向のみに向いている新生児は、頭と頚椎の継ぎ目にズレと固着が生じている可能性があります。
頭頚部に異常が生じると目の動きに異常が生じます。そして頭が傾き、平衡感覚が悪くなります。

そのままほ放っておくと「情緒の不安定や知力の発達障害をもった子どもに成長するおそれ」があるそうです。

出産時に首や股関節や頭蓋骨に受けるストレスによって引き起こされる症状を「バーストラウマ」といいます。

首のすわりが悪い、寝返りがうまくできない、はいはいがうまくできない、おっぱいをしっかり飲めないなどは、この「バーストラウマ」が原因だそうです。

バーストラウマは医学的(お医者さん的)には正常であっても、首や頭(新生児はまだ頭蓋骨が完成していません)、股関節などに無理な力がかかりそこにズレと固着(うごきにくくなっている状態)が生じている状態です。


脅かしますね。
医師が気づかない異常が忍び寄っているような怖さを感じてしまうことでしょう。


良心的にカイロプラクティックをされているかたの名誉のために、全国カイロプラクター協議会のサイトを紹介しておきます。


その中に次のように書かれています。

日本では代替医療にも認められていないこととあらためて再認識する必要がある。

日本ではカイロプラクターは、治療はしてはならないのです。できるのは施術だけです。病気のアドバイス、指導、相談などはとんでもないことです。
たとえ知識があっても絶対にしてはならいことです。

またカイロプラクティックが適さないケースには以下のように書かれています。

17.妊産婦
18.幼児に対するアジャスト
 5歳以下の幼児には絶対にしてはならない


いったい、あの助産師が行った新生児の逆さづりはどの考えから来たのでしょうか?





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