助産師と自然療法そして「お手当て」47  <左右非対称は自然ではないか>

胎児と新生児の左右のあれこれを書いてきました。


こちらの記事までで紹介してきたように、整体的な考えの中には左右対称がよいことという考え方が強いように感じられるのですが、人の体はそもそも左右非対称が『自然』なのではないかと考えてみたくなったからです。


胎児の時代からそして生まれた後も、さまざまな左右非対称の状況はそれなりに理由があり、必然性を伴うのではないでしょうか。


それを左右対称にしなければならないと考えるのは、むしろ『不自然』ではないかと思えるのです。


<ゆがみ>


人の体の左右非対称を「ゆがみ」と表現することで、人は大きな不安をもつことでしょう。
何か「直さなければならないのではないか」と。


話は変りますが、クロールで泳ぐときの息継ぎは私はほとんど右側です。


競泳の選手を見ていると、左右どちらでも息継ぎができる人が多いようです。


左右ともに自由自在に体のバランスを取れたほうが、より早く泳げるようになるかと思い、しばらく左での息継ぎも練習してみました。


やっぱり、なかなかできないものです。なにか泳ぎがぎこちなくて、左側へ顔を向けようとしただけで手足のバランスが崩れてしまうのです。
あきらめて最近では右での息継ぎだけになりました。
あ、これは「もっと若かったら・・・」の話かもしれませんね。


では、息継ぎのいらない、一見左右対称の動きをしている背泳はどうでしょうか。

私が一番得意なのが背泳ですが、やはり泳いでいるときの動きは左右非対称です。


というのも、私の場合、入水する手がまず右手から入って水を大きくかき、そして左手を入水させて進行方向にバランスをとりながら水をかいています。
同じように手を水の中に入れても、左右では違う働きをしています。


また、もともと握力や腕力も左右差があるので、微妙に左右のバランスをとりながら進んでいます。


さらに体幹部も内臓の左右差があるのでその重みに対しても、微妙なバランスをとりながら泳いでいるのではないかと思います。


抵抗のない早い泳ぎは左右対称の泳ぎでは得られないことは、トップスイマーの水中映像をみてもわかります。
「くせ」があるのですね。
陸上であれば、「ゆがみ」ということになるのでしょうか。


助産師の勧める整体的ケアの危うさ>


これまでにも胎内でゆがんだ体を直すためと出生直後に新生児を「逆さづり」にしたり、新生児〜幼児期に向き癖をつくらないようにと「新生児〜幼児期のフィジカルケア」を勧めている助産師について書いてきました。


その考え方のもとをたどっていくと、「人の体は左右対称になるとよい」という思い込みから始まっているように思われます。
そして、それは「左右対称でないと何か不調がおきるのではないか」という不安を与えてしまいます。


本来は不安に思う必要もないようなことでも、その不安に対して何かをしてくれる助産師の方が、一見親切であり、物事を深く考えているようにみえるかもしれません。


最近、妊産婦さんの中で母子手帳の母親学級受講記録に「骨盤ケア」のスタンプが押されているのを目にするようになりました。


母子フィジカルケア研究会で「資格」をとった助産師が、開業のいちスタイルとして講座を開いているのだと思います。


こういう講座に出席して、本当は必要のないような物品も購入したり一生懸命になっている妊産婦さんに、どういう説明が受け入れられるのだろうと心を痛めています。




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