正しさより正確性を 3 <どこからか沸いてくる誤った知識>

新生児にはビタミンK2シロップを飲ませることを知っているけれども、納得できない人がこれからもまた、さまざまな理由とともに出現することでしょう。
そのつど、新生児のリスクを減らすために説明をするしかないのかもしれません。



ところが、最近、知人から驚きの話を聞きました。
「ビタミンK2シロップなんて必要がない。医療介入の多い分娩が増えたから飲ませなければいけなくなったのでしょう?」ととらえている助産師がいるというのです。


「医療介入の多い分娩」が何を意味しているのか、本人と話をしたわけではないので想像するしかないのですが、吸引分娩とか鉗子分娩のことでしょうか。
もしかしたら、促進剤を使ったとか、無痛分娩とか、帝王切開とかも「自然ではない医療介入」ととらえているかもしれませんが。



あの事件を知っているはずの年代の助産師のようですから、やはり残念としかいいようがありません。



<誤った知識が広がり出した背景は何か>



ビタミンK不足によって新生児メレナが起こるということは、周産期看護では基本的な知識です。
私が助産師になった頃、ちょうどビタミンK2シロップの予防投与が始まりました。


それでもたまに、血液の混じった嘔吐や血便が出る新生児にあたっては、最悪の状況が目に浮かんで緊張しました。


新生児メレナについて初めて知る妊婦さんならともかく、助産師の中に「ビタミンK2シロップなんて飲ませなくてよい」と考える人がいるなんて、2000年代に入るまで想像すらしたこともありませんでした。
当時、一緒に働いていたスタッフで、否定的なことを言う人はいなかったので。



2000年代になって、急速に自然療法的な考えが広がり、助産雑誌などでも目にするようになりました。
そしておそらく、それ以前に1970〜80年代頃に、開業助産師と野口整体マクロビなどが出会って、混じり合いながらその流れが出来始めていたのではないかと推測しています。



<1ヶ月頃に脳出血を起こすこともある>



幸いにして、私は重症な新生児メレナを発症した赤ちゃんに出会わずに済んでいます。
ちょうど、私が助産師になった頃に始まった予防投与のおかげだとつくづく思うこのごろです。


新生児メレナについて紹介したこちらの記事にあるように、19世紀末の病院で「頻度は0.46%」ですから、もしかしたら一生に一度遭遇するかどうか の確率かもしれません。


出生後24時間以内ぐらいの新生児は吐きやすいので、その合間を縫って最初のビタミンK2シロップを飲ませられると、まずは安堵します。
そして退院日に2回目を飲ませると、まあほぼ大丈夫と思っていました。


「あの事件」をきっかけに、1ヶ月頃の脳出血の怖さをさらにひしひしと感じるようになりました。


助産師として同じような知識があるはずなのに、どこでどうして「お産に医療介入が増えたからK2シロップが必要になった」という誤った理解になるのだろう。



やはりあのホメオパシーの問題は終わっていなかったと思ったのでした。
もう少し、後日続きます。




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