助産師と自然療法そして「お手当て」 42 <母子整体とは?−新生児・乳児編>

母子フィジカルサポート研究会のHPの最初には「キーワードは『姿勢と発達』」とあり、中の「母子フィジカル研究会とは」には、以下のように書かれています。

当会の提唱する「母子フィジカルサポート」とは、「母と子がその人らしく妊娠・分娩・育児に適応できるよう身体的特徴(姿勢と発達)を踏まえたサポートを行うこと」


心理学的には生まれてから死に至るまでの人の変化に対して「発達」という表現を使うようですが、通常の医療の中で「発達」というのはおもに小児に対しての用語だと私は受け止めていました。


ですから、「姿勢と発達」を小児だけでなく母に対しても「その人らしく妊娠・分娩・育児に適応できる」という対象を広げた使い方に何か違和感がありますが、具体的に新生児や乳児に対してどのような支援方法なのかみていきたいと思います。


<べびぃケアとは何か>


同研究会の代表理事、吉田敦子氏は「おなかにいるときからはじめるべびぃケア:妊娠・出産・育児を気持ちよく」(吉田敦子・杉上貴子氏、合同出版、2012年)という本を出しているようです。


Amazonでみると、以下のような内容です。

【内容説明】
べびぃケアは赤ちゃんの姿勢に注目した育児法
毎日の育児や遊びにこの視点を取り入れると、にこにこご機嫌、すやすやと眠り、妊娠・出産・育児がらくらく楽しくなります。

【内容 (「BOOK」データーベースより】

赤ちゃんとママのからだを整えるべびぃケアをはじめましょう。
おなかの中を整えて、赤ちゃんとママに心地よい妊娠・出産、だっこ、おっぱい、おねんねをケアして、赤ちゃんもママもお気持ちいい毎日。
妊娠・出産・育児が楽しくなります。

べびぃケアは「赤ちゃんの姿勢に注目した育児法」とのことですが、「おなかの中を整える」とは何でしょうか?
育児法というのは、通常、生まれた後の赤ちゃんに対する言葉だと思うのですが、胎児も対象にしているのでしょうか?


同研究会が提唱する「べびぃケア(べびぃ整体)」とは何か、HPには書かれていませんでした。


そこで、「べびぃケア」を掲げている助産院から紹介してみようと思います。


<新生児〜幼児期のフィジカルケア>


その助産院では、「べびぃケアを含む」として「新生児〜幼児期のフィジカルケア」を掲げていました。


内容をそのまま引用します。

ー母子共に"気持ち良い"と感じる育児法は、赤ちゃんの発達を促し、親に自信を持たせてくれるー


回旋異常・微弱陣痛・遷延分娩・吸引分娩・帝王切開などで生まれた赤ちゃんは、身体がこわばっていることが多く、「つらい」「苦しい」「痛い」と訴えて、よく泣いたり、泣き叫ぶことが多いのです。赤ちゃんの「泣く」は大人に伝えたいメッセージであり、訴えなのです。決して理由もなく泣くことはありません。ぜひ赤ちゃんの身体を"気持ち良い"状態にしてあげてください。
また、そのような赤ちゃんは上手に母乳が飲めないことが多いのです。
母乳分泌不足・上手に飲ませられない・飲めない等は、まず赤ちゃんの問題を解決してあげることが大切です。

赤ちゃんの頭のゆがみは、いろいろな問題を含んでいて、赤ちゃんが辛い思いをしていることが多いのです。
まずは向き癖(これは癖ではない)を作らないことも大切です。

*全身が未熟な赤ちゃんの養育方法(赤ちゃんの扱い方)にも慎重さが必要です。


最近は、赤ちゃんの扱い方が丁寧でない傾向があると感じています。気持ち良い状態にしてあげる養育方法を学び、赤ちゃんが元気に正常な姿勢運動発達ができるようにしてあげてください。

退院後、早めに来院し、その後も発達段階に応じて定期的に来院されることをお勧めしておきます。正常な姿勢運動発達には、その順番が重要であり、将来の二足歩行の準備期としても重要な意味があります。

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何だかいろいろなところで目にしますね、「育てにくい赤ちゃん」とか「こうすれば将来大丈夫」のようなものを。


たとえば「母乳育児がつらくなるー育てにくさの要因」として舌小帯切除を勧めたり、非行少年にさせないための「妊娠・出産・授乳期のプライマリー・アダプテーション」とか。
あるいは、「良い子が育つ食べ方」とか。



赤ちゃんの異常ではない本来の姿を「育てにくい」として、それを舌小帯や頭のゆがみ、あるいは食べ物に原因があるといえるほど、その助産師は本当に赤ちゃんを観察しているのでしょうか?
あるいは、それを問題の本質だと言い切れるほどたくさんの赤ちゃんやお母さんたちの全体を把握したうえで、検証しているのでしょうか?


思い込みで、必要もない不安をお母さんたちに広げることになっていなければいいのですが。


次回は「赤ちゃんの姿勢に注目した育児法」でよく聞かれる「赤ちゃんの頭のゆがみ」について考えてみようと思います。




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