医療介入とは 76 <1990年ごろの助産師が使った超音波診断装置とは>

前回の記事で紹介した「助産師・看護師のための超音波画像診断」という本の初版の序文の中で、よくわからない部分がありました。


「第1版 序文」には以下のようなことが書かれています。

全国助産婦教育協議会が3年前に行った調査によれば、約20%にあたる助産婦が超音波診断装置を自分で操作し、妊婦の健康診査を行っているとのことです。また助産婦学校で超音波診断法を実習に取り入れているところは50%にもなっており、看護婦の外来実習でも、超音波画像診断は、特殊検査とは言えないほど普通に行われています。この傾向はさらに強くなることは必定で、将来はより多くの助産婦、看護婦が妊婦健康診査や看護に超音波診断装置を利用することになるでしょう。

この序文は1993年に書かれていますから、「全国助産婦教育協議会が3年前に行った調査」は1990年ごろのものということになります。


その調査報告書を読んではいませんが、年代から考えるとこの場合の「超音波診断装置」というのは「画像診断」機器のことではなく、分娩監視装置によるNST(Non Stress Test)のことではないでしょうか?


看護師の場合には、産婦人科に限らず、診察の介助として超音波「画像」診断の介助は特殊検査ではなくなった時代でした。


助産師と看護師が関わる超音波診断装置について並列で書かれていますが、指している内容には大きな相違があります。


1990年当時にもし助産師が妊婦健診で自ら超音波画像診断機器を操作して、胎児推定体重を計測したり、骨盤位などの胎位をみていたとすれば、なにも「助産師の自律のために助産外来を」と大きな声をあげる必要性もないことでしょう。


1990年代の助産師は「助産外来」とあえて言わなくても、後期の妊婦健診ではNSTを実施し、医師に報告をし、保健指導が必要な場合には実施していましたから、そういう意味の「20%」ではないかと思います。


当時はまだ医師や臨床検査技師でさえ、広がり始めた超音波画像診断機器を読みこなすのに試行錯誤していた時代でした。


助産師が超音波画像診断機器に触れることでさえ私自身は考えもつかないほど、その器械は医師か検査技師が取り扱うものという認識がありました。
CTやMRIを医師と放射線技師が取り扱うように。


そのような1990年代初頭の頃に、妊婦健診で助産師自ら超音波画像診断装置で胎児の様子を検査していた施設があるはずはないと思います。


この序文はあえてそのあたりをうやむやにした書き方になっている歯切れの悪さのようなものを感じます。


医師を含めて誰かが、何か目的があって助産師に超音波画像診断機器を使わせたいと考えているのだと思いますが、その背景は何なのでしょうか?
よくわかりません。


同じ超音波診断装置でも、分娩監視装置と超音波画像診断機器は助産師や看護師の業務から考えれば同列にはできない違いがあります。
そのあたりを少しずつ考えてみようと思います。