新生児のあれこれ 10 <左と右、胎内での姿勢>

妊娠初期から28週頃までに、一気に臍帯が伸びることを前回書きました。


羊水の中でへその緒につながりながら、胎児はまるで宇宙遊泳をしているかのように自由自在に動いているのでしょうね。


妊婦健診の記録を見ていると、24〜25週前後だとまだまだ横位になることもあります。
その後徐々に、頭位か骨盤位(さかご)のどちらかの胎位に固定していきます。


<胎向(たいこう)>


頭位か骨盤位あるいは横位を胎位といいますが、この胎位だけでなく妊娠後期になると胎児の姿勢はもうひとつ別の視点で「固定」されていきます。


それが胎向というもので、胎児の背中が母体の左右のどちらに向いているかどうかということです。


こういう基礎的な内容は手元の周産期関係の本には案外書かれていないので(おそらく教科書なら書かれているとは思いますが)、少し古いのですが「最新産科学ー正常編ー 改訂第19版」(真柄正直著、室岡一改訂、文光堂、昭和61)から引用します。

胎向


胎向とは、縦位では児背、横位では児頭が母体側に対する関係をいう。すなわち児背または児頭が母体左側に向かうものを第1胎向きといい、右側に向かうものを第2胎向という。


この胎向は、胎児心音を確認する際に大事なポイントになります。


おなかの上から児背がどちらに向いているかを確認してから、胎児心音を聴取します。


<胎児は左向きか、右向きか>


上記の本には胎児の位置別の割合が書かれていますので引用します。

縦位・・・99.3〜99.5%
  頭位・・・95%
   (第1胎向は2/3を占める。第1分類が多い)


お産が近い妊産婦さんのおよそ6割が、第1胎向、すなわち胎児の背中が母体の左側に向いているということです。


この割合の最新のデーターを探してもみつけられていないのですが、感覚的には第1胎向はもう少し多いような気がしています。


「第1分類」というのはさらに児背が母体の前面に向いていることで、第2分類というのは児背が母体の背骨のほうに向いていることをいいます。


多くの胎児がこの第1胎向の姿勢をとっているのは、母体の右側にある肝臓という大きな臓器との位置関係が理由であると習った記憶があります。


第1胎向の胎児は、母体の骨盤に対して頭を時計まわりに回旋させながら狭い骨盤内を下りてきます。


そして一旦、顔を下向きにして母体から出た児頭は、その後、母体の右足側に顔を向けて体幹が出始めます。


文字での説明ではわかりにくいですね。


この胎内での胎児の左右の向きの違いは、果たして何か胎児に影響を与えるものなのでしょうか?
まだまだ未知の世界のひとつなのかもしれません。



<おまけ>


初産婦さんの場合には、分娩前に第1胎向であれば生まれる時にはほぼ必ず母体の右側を向きながら生まれてきます。


ところが経産婦さんの場合には、時々、分娩進行中は第1胎向だったのに骨盤内を回旋して下りてくるときにぐるりと半回転して、第2胎向の方向で生まれてくることを経験します。


やはり、経産婦さんの産道は余裕があるのかなと思っているのですが、真相はよくわかりません。





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