今回は、ぽむぽむさんのブログ記事「母乳育児に成功した理由を考えてみました」であげられているいくつかの「理由」について考えてみようと思います。
お母さんひとりひとりの状況も考え方も違うし、新生児もひとりひとり違います。また産科スタッフの授乳支援に対する力量も考え方もまたいろいろです。
そんな混沌とした状況の中で試行錯誤しているので、私自身がまだ答えが見えないのですが。
<母乳育児推奨ではない病院はどれくらいあるのか>
まずぽむぽむさんが母乳育児成功の理由としてあげられているのが、「母乳育児推進の産院」だったとして以下のように書かれています。
これを言ったら、身もふたもないのですが、産院によって母乳育児の成功率が違うのは事実だと思いました。
出産後数日は、授乳のたびに助産師さんが抱き方や左右のおっぱいのバランスなど教えてくださいました。
最近は助産師の中でも「ラッチオン」「ポジショニング」という言葉を使う人が増えてきました。
日本語で言えば、「(おっぱいを深く)くわえさせ方」「(おっぱいを深く)くわせさえる抱き方」というところでしょうか。
こちらの記事に書いたように、日本ではとくに新しいことではなく、ずっと以前から産科病棟では看護スタッフがお母さんに手取り足取り教えてきました。
もしかしたら積極的ではない病院も中にはあるかもしれません。
でも少なくとも私が勤務してきた数箇所の病院と現在のクリニックでは、当然のことでした。
授乳についてほとんど何も教えない施設があるとしたら全体の何%ぐらいあるのだろう、ということをむしろ知りたいと思っています。
<「十分な指導がなかったから母乳育児に失敗した」と思ってしまう風潮>
「深くくわえさせて、おっぱいの全体から飲ませる」ためのコツを教えるだけで、赤ちゃんもよく飲めたり、驚くほどおっぱいの張りが改善したり乳頭痛が軽減することは確かです。それが乳腺炎予防にもなります。
ところが実際には、「ラッチオン」「ポジショニング」が全ての解決策にはならないことは、こちらや乳頭痛あたりで書きました。
助産師にしてみれば、ひとつとしてお産の経過が同じものがないので分娩介助に試行錯誤しているのと同じく、授乳の介助もお母さんの状態、赤ちゃんの状態もそれぞれ違います。
「あの人にはあの方法がよかった」からといって、次の人に必ずしもあう方法ではないということを誰しも経験していることでしょう。
ところが、1989年に出されたWHO/UNICEFの「母乳育児成功のための10か条」が2000年ごろから日本でも広がり始めて、産科関係者の中でも「完全母乳にできないのはミルクを足したため」「完全母乳にならないのはスタッフの認識が低いため」という視線が出始めましたし、お母さんたちの中でも「自分が完全母乳にできなかったのは病院でちゃんと教えてもらわなかったため」という声が聞かれるようになりました。
私には、理想(完全母乳)と現実(条件があえば母乳だけで育つ)の実態がもう少し検証されれば、こうした受け止め方をしなくてもすむところがあるのではないかと思えてなりません。
ぽむぽむさんの記事についてまだ続きますが、次回は、一旦、1980年代からの母乳育児支援の変化を考えてみようと思います。
「完全母乳という言葉を問い直す」まとめはこちら。