哺乳瓶のあれこれ 8 <メデラ社・・・人工乳首をやめた?>

2000年頃からでしょうか、ヌーク社に変わってメデラ社というスイスで1961年に始った会社の製品を目にするようになったのは。


そのHPの最初には、以下のように書かれています。

「母乳が一番!」
「母乳育児製品を使用したトータル・ケア」
「母乳育児は赤ちゃんにとって最良の選択」

おそらく1961年創立当初にはなかった表現が使われているのではないかと推測できます。
そんな会社側の苦悩が「母乳育児への貢献」で書かれています。


<「人工乳首をすべて取り除くことになった」経緯>


このメデラ社は上記の中で、人工乳首の販売をやめたことを書いています。

WHOコードは、人工乳に関する無制限で積極的なマーケティングを阻止しお母さまと赤ちゃんを守るため1980年代に施行されました。
メデラ社は1980年以来、さく乳器と授乳関連製品の開発・製造・販売を行ってきました。これらの製品は当初、さく乳から授乳までを補う一環したシステムとして哺乳瓶と人工乳首を付属した形で提供されていました。

しかし、弊社が密に連携するラクテーション関連団体や母乳育児団体からのフィードバックに基づき、弊社の製品から人工乳首をすべて取り除くことにしました。

その「フィードバック」のひとつについて、次のような経緯と「反省」が書かれています。

2008年の夏に米国とカナダで起こったビスフェノール(BPA)に関する議論に応える形で、メデラ社はこれらの国々でBPAを使用しない母乳ボトルと人工乳首の販売を行う決定をし、安全な母乳ボトルと授乳製品について告知をしました。その結果、メデラ社はNABA(全米母乳育児支援協会)からWHOコード違反であると分類されました

WHOコードというのは、「母乳代用品のマーケティングに関する国際基準」です。日本語訳は「日本ラクテーションコンサルテーション協会」が出しているようです。

この一連の状況から、現行のWHOコードによる規制に違反することなく、お母さまの期待とニーズを満たすことの難しさがわかると思います。
とはいえ、私たちの根本にある目標「母乳育児の支援」は、現在そして将来も変わることはありません。(中略)

この反省から、私たちは授乳製品のマーケティングに関する厳格、具体的な自社ガイドラインを作成することになりました。このガイドラインにより、授乳製品に関しては、すでにさく乳を選択しており、さく乳した母乳を赤ちゃんに与えるための方法を必要とするお母さまにのみ向けてコミュニケーションする、ということを明確にしています。

メデラ社が販売していた哺乳瓶あくまでも搾乳をした母乳を飲ませるための「母乳ボトル」と人工乳首であり、人工ミルクを飲ませるための製品は作らないという考えだったようです。
そしてその「母乳ボトル」と「人工乳首」でさえ、母乳育児に弊害があるものとしてやめざるをえない働きかけがあったということです。


<「nipple」は作らないけれど「device」>


メデラ社のHPには、一見哺乳びんと人工乳首のようなカームという製品が紹介されています。

カームは、西オーストラリア大学との共同研究から得られた結果をもとに開発され、母乳育児を続けたいと願い、直接授乳ができないときにさく乳した母乳をあげるお母さまと赤ちゃんにとって理想的なデバイスです

哺乳びんや人工乳首ではなく、デバイスという言葉が使われています。
デバイスには、「装置、考案物」そして「からくり」といった意味があるようです



「カーム」の特徴には以下のように書かれています。

・自然なリズムで哺乳したり、休憩したり呼吸することができます。
・舌と顎を連動させて、個々の体力に見合った陰圧を形成します。
・直接授乳で学んだ「個々の自然な飲み方」が維持されるため。直接授乳からカームに、そして再びカームから直接授乳へスムーズな切り換えをサポートします。

「新生児が哺乳瓶で『飲む』行動に伴うリスクとは何か2」その3あたりで書いたように、新生児でさえも哺乳びんと人工乳首での授乳も自律した行動があるように感じます。


今まで紹介したさまざまな商品の違いも、哺乳びんと人工乳首からデバイスという名称にしても、新生児や乳児には大差のない大人側の事情の「からくり」かもしれません。