哺乳瓶のあれこれ 7 <さまざまな商品の宣伝>

私が助産師になった1980年代終わり頃から現在まで、さまざまな人工乳首が発売されています。


私が勤務していた病院では、1990年代には一般的な形のものヌーク、2000年代に入ってからは一般的な形のものと「母乳相談室」ぐらいしか使っていませんでした。



そういう製品を勤務先で取り入れたきっかけも今までの記事に書いたように、とくに従来の人工乳首で弊害があったことが明らかになったとか、比較検証するような研究が基になったわけではなく、なんとなく誰かが「この商品が良いらしい」と言い出して決める程度のことでした。


こうしてあらためて人工乳首について考えてみると、一般的な形のものは単に材質が柔らかいので先端が潰れやすいことと傾けただけでミルクが飛び出してしまうのに対して、ヌークと「母乳相談室」は弾力性がありミルクも出過ぎない点が使いやすかった程度の差です。


ところが退院すると、お母さん達はもっと多様な商品の情報に直面します。


<それぞれの「特徴」>


今まで紹介した製品を含めて、それぞれの特徴や効果として謳っている内容を挙げてみます。

「ヌーク」
特徴的な私たちのニップルの形は、授乳時のお母さんの乳首の形を再現しています。NUKのニップル自然な形で顎にフィットし、お口の筋肉を鍛え、授乳中の赤ちゃんが空気を吸わないように設計されています。

「桶谷式直接授乳訓練用 母乳相談室 哺乳びん」
母乳相談室は、赤ちゃんが大きな口をあけてお母さんのおっぱいを飲むトレーニング用として開発されました。
母乳で育てたいけれど、母乳をうまく飲めない赤ちゃんや、乳首のトラブル(扁平・陥没)などで一時的にどうしても母乳を飲ませられないお母さんにおすすめする哺乳びんです。

2002年には「母乳相談室」を共同開発したピジョン社から「母乳実感」という商品が発売になっています。
NHKエデュケーショナルが運営する育児応援サイト すくコム」というサイトから抜粋します。

「母乳実感」
これまでの哺乳びんのスタンダードといわれてきたのは、1979年に発売されたK型哺乳器。狭い口径のびんにぷっくり突き出たフォルムの乳首というスタイルが長年守られてきました。が、2002年に、よりおっぱいに近い感触を、と乳首の形を再考察して発売された母乳実感の初期もでるが、独特なフォルムで話題を集めて徐々に逆転。広い口径のびんに、世界一柔らかいシリコーンゴムを使って、よりリアルなおっぱい感を追求した最新の母乳実感が、ついにピジョンのスタンダードとなりました。

同じ広口の「母乳相談室」と「母乳実感」の差は何かというと、乳首先端の形と柔らかさぐらいでしょうか?


それ以外にもいくつか紹介しましょう。

「ビーンスタークニプル」
1.上下の形が違い、胴部が大きい 2.シリコーンゴムを使用 
3.ニプルのサイズはワンサイズ  4.飲み孔がクロスカット 
5.内側にリブ(弁)がついている

ビーンスタークニプル 赤ちゃん思い」は母乳を飲むときと同じように、舌やあごの筋肉をしっかりと使って飲むことができる構造になっています。赤ちゃんに必要な動作が自然と身についていきます。

「teteo哺乳びん」
赤ちゃんがママのおっぱいを飲む、その飲み方を研究しました。

一番あっさりした説明という印象ですが、この先端の丸みが特徴なのでしょうか。


以上は、「授乳時の赤ちゃんの舌の動きや飲み方の研究」をもとに開発されたと説明されている商品です。


<「医師が考案した」を前面に出したもの>


中には医師が考案したことを前面に出した製品もあります。

「ドクター・ブラウンボトル」
・ミルクの泡が原因と考えられる腹痛・夜泣き・吐き戻しなどの防止に役立ちます。
・スムーズなミルクの流れで心地よく飲めるので、赤ちゃんのストレスを大幅に軽減します。
・ミルクを吸い込むとおこすおそれのある中耳炎の防止に役立ちます。

このあたりは「育てにくさ」をすべて舌小帯に原因を求めることに似ているような気もしますが。


「中耳炎防止」とうたった哺乳びんもあります。

「ドクターベッタ哺乳びん」
従来の哺乳びんは、乳児がミルクを飲む際にどうしても寝た姿勢に近い体勢をとらざるを得ませんでした。そのために耳管へミルクが流れ込み、中耳炎などの病気を引き起こしてしまう恐れがあったのです。

ただ「医師が考案した」と書かれているのですが、ベッタの公式サイトにはその医学的な説明は見あたらないようです。



ひとつひとつの説明を読むと「そうか。そういうことが必要なのか」と思わせる内容ですが、並べてみると各社の説明は相反するようなものもあって、結局は今のところ、効果はわからないということろなのではないかと私には思えるのですが。


また国内ではブームが去ったかのような印象のヌークですが、検索すると「咬合のためにヌークがよい」と勧めている歯科医のサイトがいくつかありました。
読むと「そうなのか」と不安になるかもしれません。
それらの人工乳首の弊害説については、また改めて考えてみようと思います。


最近はさらに、「母乳育児が一番」と「WHOコード」を前面に出した会社もあるようです。
次回はそのメーカーをみていこうと思います。