哺乳瓶のあれこれ 12  <哺乳瓶の弊害や効果を考える時に必要なこと>

「忘れてはいけないこと」で書きましたが、世の中には生まれてからミルクだけが成長の糧であり、そのために哺乳瓶と人工乳首が不可欠な赤ちゃんがいます。


哺乳瓶や人工乳首の「効果の宣伝」「弊害」も、そのどちらにも欠けている視点が、こうした最初から哺乳瓶を使う必要のある赤ちゃんにはどうするのが最適かという視点ではないかと思います。


とりわけ周産期医療や小児医療に携わる医療従事者は、「全ての赤ちゃん」にそれぞれできるだけよい生育環境を考える使命のようなものがあるはずです。


哺乳瓶と人工乳首の使用が本当に何らかの弊害をもたらすのであれば、それだけを最初から使い続ける必要がある赤ちゃんには、どうしたらその弊害をできるだけ少なくできるのか全力で考えていかなければならないと思います。


あるいは、新生児期から乳児期の発達の本質に近い効果があると検証された製品があるならば、その情報を親に伝えてよい選択ができるように配慮することも必要です。



そうしたミルクで育てられている赤ちゃんとご家族のために、哺乳瓶・人工乳首の弊害や効果に関する情報を整理することが、もっとも優先される必要があるのではないでしょうか?


ところが新生児や乳児に関わる私たちでさえ、哺乳瓶での授乳にどれほどの知識があるのでしょうか。


<哺乳瓶での授乳方法の説明の少なさ>


2007(平成19)年に厚生労働省から「授乳・離乳の支援ガイド」が出されました。
それを現場で使いやすいように説明をくわえた「『授乳・理由の支援ガイド』実践の手引き」が母子衛生研究会から2008年に出版されています。



その「はじめに」には、母乳育児推進のための支援の重要性とともに、以下のようにも書かれています。

2.育児用ミルクで育てる母親にも、母乳育児の母親と同等、あるいはそれ以上の支援が必要である。母乳育児の推進が基本であるが、それだけにとらわれるのではなく、混合栄養・人工栄養育児の母子に対し、十分な支援がなされなければならない。

「母乳育児の母親と同等、あるいはそれ以上の支援が必要である」
本当にそうだと思います。


ミルクをどのように、どれだけ飲ませたらよいのか。
そんな基本的なことでさえ、私が看護職になったこの30年間、ほとんどいって研究もされてこなかったのではないかと思います。


実際に、この「実践の手引き」にも、ミルクの授乳に関しては「育児用ミルクの与え方」を含めて5ページだけです。


上記の厚労省の「授乳・離乳の支援ガイド」では、30ページほどある「授乳ガイド」の中で「育児用ミルクで育てる場合の支援のポイント」は、以下のたった数行しかありません。

授乳を通して、母子のスキンシップが図られるよう、しっかり抱いて、優しく声かけを行うことなど、温かいふれあいを重視した支援を行う。また授乳の不安やトラブルで育児に自信をなくしてしまうことがないよう、母親の心の状態等に十分に配慮して、支援を進める。


ミルク授乳をしているお母さん達に本当に自信をつけるとしたら、このような「(母乳を与えられずに)ミルクで育てているお母さん」というまるで腫れ物にでもさわるかのような視線を感じる支援ではなく、具体的にどのようにミルクを授乳させることがわが子の成長・発達によいのか、具体的な方法を示してくれることではないかと思います。