看護基礎教育の大学化 8 <看護の方向性を誰が決めているのか>

日本の助産師の方向性がどこで決められているのかがよくわからないように、日本の看護師、あるいは看護そのものの方向性がどこでどのように決まっていくのかよくわかりません。


この看護基礎教育の大学化も、どこでどのように進められているのでしょうか。


日本看護協会が先頭にたっているのだろうということはわかります。
看護協会の「看護実践情報 看護政策」では、以下の3つが挙げられています。

○「7対1入院基本料」の創設
○看護基礎教育の充実と卒後研修制度の推進
訪問看護の拡充、在宅医療の充実

「患者の身近で働いている看護職の立場から国民の健康で安心な暮らしの実現を目指して政策提言を行っています」と書かれています。


<「7対1入院基本料」の影響・・・病棟閉鎖>


「7対1看護」というのは、入院患者数にたいする看護師の配置を規定したものです。コトバンクの説明をそのまま引用します。

医療保険から病院に支払われる報酬は看護態勢が手厚いほど多い。一般病棟では、看護師一人が対応する患者数に応じ「15対1」「13対1」「10対1」「7対1」の4区分がある。「7対1」は06年診療報酬改訂で設けられた。
最も多くの看護師が必要になる分、報酬は最優先される。


2006年のこの診療報酬改訂が医療現場に与える混乱は、ネット上を通じてある程度は知っていました。
「7対1看護」を取るために、大きな病院は看護師確保に大変そうでした。



「・・・そうでした」というのも、産科診療所にはまったく関係のない話でした。
いえ、余波でますます人手不足になる可能性はありましたが。



大きな病院ではあの手この手で看護師確保に奔走し、確保できないときには病棟閉鎖をして「7対1」になるようにしていることもネット上の情報で知りました。


私の母が転院したリハビリ病院も、5階建ての地域の中核総合病院だったようですが、そのうちの3病棟を閉鎖しておもに回復期リハビリを受け入れるようになったようです。


面会に行く時には、その閉鎖した病棟を通過しないと母の入院病棟へ行けないのですが、ベッドや医療用品がそのままになった閉鎖病棟を見ると、本当にこの地域の医療はこれで大丈夫なのかと心配になりました。


<少ない看護師と看護助手で>


急性期病院からリハビリ目的で転院してきた人のための亜急性病棟ですから、看護師数はおそらく「10対1」ではないかと思います。


日中の面会時間に行くと、病棟にはリハビリスタッフなどけっこうたくさんのスタッフがいます。
ところが看護師は平日の日勤でも3〜4人しかいません。
看護師と思っていた人は大部分が看護助手さんたちで、身の回りの世話「療養上の世話」をしてくださっていました。


母の受け持ちの担当看護師に会いたいと思っても、なかなか会う機会はありませんでした。


「7対1看護」を獲得できた病院以外の施設の看護師さんたちは、この看護協会の政策提言に納得しているのでしょうか?


看護協会ニュースなどを読んでも、あまり看護の現場からの問題提起は聞こえてきません。
でも、制度だけがどこかで次々に替えさせられて、前線の臨床現場はただ右往左往されて青色吐息なのではないかと思えるのです。


看護師の労働条件ももちろん重要な課題です。
でもわたしたちの「看護」は、これでほんとうに患者さんや家族によいものを提供できるのでしょうか?


誰が看護の方向性を決めていくのでしょうか。





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