産科診療所から 13  <診療所で働く人たち・・・医療事務>

だいぶ間があきましたが、また時々、このあたりから書き始めたテーマの続きです。


産科施設というと、どうしても医師や助産師・看護師のように直接、妊産婦さんに関わる職種が注目されやすいものです。


また、ブログ内でも看護職の国家資格・都道府県資格に対して、民間療法のような民間資格や無資格を対比させた記事が多いので、国家資格があることがその仕事の質を保証しているかのような書き方が多くなってしまいます。


小さな診療所でもいろいろな職業があり、資格はないけれどその方たちの経験によって支えられていることをしばらく書いてみようと思います。


<医療事務が身近になった>


総合病院で働いていたある時期から、医療事務という方たちがとても身近になりました。


1980年代に働いていた病院では医療事務は医事課の部屋で行われていて、病棟で直接会うことはありませんでした。


1990年代頃からは、各病棟にも医療事務のスタッフが配属されるようになった記憶があります。
年々、複雑になっていく診療報酬や各種の書類への対応など、外来や病棟での医師や看護職の業務の負担が相当軽減されました。


また病棟には何十本という電話が毎日かかってくるのですが、事務スタッフの方が取り次いでくださることで、看護職も処置やケアを中断させられることがなくなりました。


入退院のカルテ管理も看護職の時間をとられる業務だったのですが、病棟の事務スタッフがしてくれるようになり、その分の時間をケアにまわすことができるようになりました。


<医療事務とは>


病棟や外来で働く看護職にとっては縁の下の力持ち的な医療事務スタッフですが、本業は縁の下どころか、診療報酬制度という病院の大事な部分を担っています。


医療事務の「概要」では以下のように説明されています。

医療保険事務は医療機関内のすべての診療行為が対象になる。国民健康保険社会保険をはじめ、老人医療や公費制度など複雑な現在の医療保険の内容を確実に理解し、的確かつスピーディに医療保険事務を行えるよう、医療制度、保険業務、レセプト記載、点数算定など、医療事務の断片的知識を整理し、体系的に習得させ、さらに医事コンピュータの操作から受付事務に欠かせない接遇マナー等、養成教育もさまざまな項目を教授している。

産科診療所で働くようになって、細かく計算される会計表を直接見る機会が増えました。
また、産科医療補償制度が導入されたり、妊婦健診など自治体の補助制度などが次々と変わることにも対応していかなければいけません。


毎月、月末や月初めには夜遅くまで事務作業をされています。


側でみていると、あの数字だらけの計算を正確に行うことは私にはとても無理そうだし、さまざまな書類や制度の変化に対応することも、私には適性がなさそうです。


診療所に勤務して、今までよりも院内の別の部署との距離が近くなって、本当にそれぞれ仕事というのは大変なものだと、あらためて感じる毎日です。



<医療事務の労働条件は守られているのか>


さて、上で引用した医療事務の説明は、「医療事務は何らかの養成機関がある」ことを前提として書かれているように読めます。


灯台下暗しで、私もつい最近まで、医療事務スタッフというのは民間の養成機関で基本的なことを学び、民間資格を持っているものだと思っていました。
よく雑誌などでも広告をみますから。


私の勤務先のベテランの事務スタッフに聞いたら、何も資格がないまま病院で教わりながら覚えたとのことでした。
それであれだけの仕事を正確にこなせるようになるのか、と素直に驚きました。


wikipediaの「医療事務」にも確かに以下のように書かれています。

(前略)各団体で資格検定などを認定している。何れの資格においても、医療保険事務をするにあたって必須のものではなく、資格がないと医療事務ができないという訳ではない。また、近年電子カルテの導入が進み、レセプト事務におけるマンパワーの必要性は薄らいでおり、新たな求人は減る傾向にある。

診療所では正規雇用ですが、総合病院では派遣スタッフが多かった印象があります。


経験を積んでもそれを認めてもらえているのか、医療機関の人件費削減として一番先に切られてしまうのではないかなど不安定な立場であることに、私自身、同じ医療従事者でありながら医療事務について無関心だったと思います。


お産で入院した方たちのアンケートを読むと、「受け付けの方の電話対応や窓口対応にほっとしました」という声が少なからずあります。


本当に、診療所の顔なのかもしれません。





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